第9話

何も言わず…手を繋いで歩いた


2人でよく行った公園

空を見上げていろんなこと話した


いつもの場所に腰をおろすと月明かりが黒い雲に覆われて見え隠れする



「どうして、連絡よこさなかった?」


「……自然消滅?よく、あることじゃない」


素っ気なく答える彼女は別人のようだった


「何だよそれ別れるってこと?」


「もう別れたっぽくない?」


「はぁ?喧嘩売ってんのか?」


思わず、声を荒げると急にシュンとしてしまった真優


「別に.....

っくしゅん」


ドサッ


「これ、着とけ」


「いいって」


「いいから」


無理矢理くるまれたジャケット

理空の匂いが身体を包んだ


一気に込み上げてくる涙をぐっとこらえた

彼はそれに気付いたのか、ソッポ向いて続けた



「真優が俺のこと嫌いになったんなら、仕方ない

なら、そうはっきり言やぁいいだろ」


「そうだね」


少しの沈黙の後

彼女がフゥーッと息を吐いて俺の方を向きなおして言った



「理空...おめでとう」


「ん?あー」


「理空はきっと、胸を張って帰国すると思ってた。

おめでとう 理空。夢...叶ったね!」


真優の笑顔

やっぱり変わってない


「ありがとう。でも、まだ、叶ったうちには入んないよ」


「うううん、そんなことないよ。

理空...すごくいい顔してる」


優しく微笑む彼女の横顔が愛しかった



「じゃ、私行くね」


「送るよ」


「いい

もう、理空は関係ないの」


「俺達、そんな簡単なもんだったのか?」


手首を掴むと振り向かないまま、

真っ直ぐ前を見て話始めた



「理空…私ね、頑張ったよ、

頑張って頑張って頑張って

もう…無理なの

それに…もう、私は理空といた頃の私じゃない」


「っんだよ、訳わかんないよ」


もう一度強引に抱きしめた



「離して」


「離すかよ

離したらお前また、逃げんだろ

だから、ぜってぇ、離さない」


「わかった

逃げない…よ」



新しい真優の家はここからすぐらしく

再び俺達は歩いた



真優の手を握りしめるとギュッと握り返してくる彼女の温もりがまだ俺を求めてるようで……。


決して涙を流さなかた彼女の心の涙が俺には見えた


静かな夜がずっと続けばいいと思った


暗い空を仰ぎながら、この手を絶対離したくないと強く思ったんだ





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