第8話

会いたいけど、会えない人のことを思うと心が張り裂けそうな気持ちとその人を思う柔らかい気持ちが入り交じる


きっと、神様がいつか会えた時の為にと

心が壊れないようにしてくれてるのかな



以前、真優の行方がわからず、いつも気がつけば、彼女が住んでいたところに来ていた


あの日、俺が真優に背を向けて歩いていった場所


「ふっ、ここに来ても仕方ないよな」


真優がもういない部屋を見上げて、

ゆっくりと歩き始めると真っ暗な夜道に見覚えるのある影を見つけた


まさか…

目を凝らして見るとゆっくり近づいてくる愛しい人の姿


「真優っ」

思わず叫んだ


俺の声に気付くと驚いた顔をして慌てて反対方向へ走り出した


「待てよっ!!真優」


すぐに追い付いて腕を掴んだ


「はぁっ、何だよ」


俺の顔を見ようとしない彼女を勢いよく引っ張って抱きしめた


「理空...」


「あんなぁ、言いたいことは山ほどある。

けど、けどな...とりあえず、抱きしめさせて」


「り...く...

ごめん、ごめんね」


彼女の消え入りそうな声は俺の耳に響いた



ずっと聞きたかった声

ずっと抱きしめたかった温もり


「いいから、今は何も言わなくていい

しばらく、このままいさせて」


俺の腕の中でコクリと頷いた彼女の細い腕が背中に回された


首もとに顔を埋めて大好きな懐かしい香りを大きく吸い込んだ

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