第2話

私の答えを聞くことなく、彼の冷えた唇が首筋を這っていく


「ンンっ、ここ...で?風邪...ひくから」


ひんやりとした手が背中から入ってくると、

一気に身体が熱くなった


「ほら、もう、熱くなってきたよ。

だから、風邪...ひかないよ」


黒髪の先からポタホタと落ちる滴が私の服を濡らし、肌に張り付く


一歩下がって、その姿を見ると満足そうな顔をして耳元で囁く


「脱がさない方がエロイな」


シャツの上から胸の先端を貪るように口に含む。

いつもと違う彼を見ているだけでたまらなくなり、力か抜けてその場に崩れ落ちた


彼はしゃがんで目線を合わせると優しく言った


「ごめん、おいで」


手を広げた彼の首にしがみついた


抱き上げられ、ベッドに下ろすと、

彼は私を置いて慌ててタオルを取りに行った


お互い濡れた服をすべて脱ぎ捨て

丁寧に拭いてくれる


「理空...恥ずかしい...」


「暗いから、何も見えないよ」


照明もつけない真っ暗な部屋に雨音だけが響く


彼の逞しい身体

私も替わって拭いてあげると擽ったいって笑い出す


さっきまでの悲しい声を上書きするようなクスクスと笑う声



雨の音

タオルが擦れる音

あなたの息遣い

あなたの笑い声


耳に響く一つ一つの"音”さえも愛しくて...


そんな音を聞いていると、

何処か淋しい雨の夜に灯火がついたようだった


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る