第14話

理空の作品公開日まで後、2日

私はやっと、彼に胸を張れるものが出来た


「もしもし、理空、明日、時間ある?」


「」 明日かぁ。夜遅い時間になるけど

大丈夫。

っで、何だよ、真優からの誘いなんて珍しい」


「理空に見てもらいたいものがあるの

駅前のホテルのロビーで待ってる」


「ホテル?っなら、そのまま泊まろっか?

ウソウソ、俺達、まだ友達…だもんな」


「いいよ…泊まっても」


「へ?」


「だから、いいよって」


「真優…じゃあ」


「あー、また、明日ね、会ってゆっくり話そ、じゃあねぇ」


プツン


「もしもし?真優?」


切りやがった

何焦ってんだよ


泊まるってことは、もう友達じゃないってことだよな



次の日、

俺は大急ぎで仕事を済ませ、真優が言ってたホテルへ向かった


「真優…ごめん、遅くなって」


「うううん、大丈夫よ

理空…こっち、来て」


彼女は俺の手を引っ張ってロビーの真ん中に連れていった


「理空に見せたかったの、これ

私が作ったの」


ホテルのロビーに飾られた大きなフラワーアレンジメント

優しい青い花を基調にしたものだった


「真優が?」


「そうだよ」


「私…負けなかったよ

女優になる夢は途絶えてしまったけど、そこで立ち止まったままじゃいけないよね。

次に進むことは、それを諦めてしまったんじゃない、夢の先の夢なんだって、わかったの」


「真優、すげぇな」


「まだ始まったばかり。

理空がいたから始められたの

ありがとう」


「そっかぁ、花かぁ」


「うん。

おめでとう、ありがとう、さよなら、

そして、愛してる

どんな時もお花はその人の気持ちを表せると思うの。

自分で演じることは出来なかったけど、これからは私の思いをお花に託して演じてもらおうと思うの。どうかな?」


「いい...いいと思う」


「良かった」


「ほんっと綺麗だなぁ

この青い花、何ていうの?」


「その花はね…理空のこと…思って選んだの」


「俺の?何で?」


「んー、恥ずかしいから、教えなぁーい」


「教えろよっ」


いたずらっぽく言う真優の肩を引き寄せた


「きゃっ」


近づいた彼女の顔がいつもの無邪気な顔から女の顔に変わった。

俺は思わず目をそらして腰に手を回して急いで歩き出した


「行こ」


「何処に?」


「泊まるって言ったじゃん」


「あっ、そっか

…うん」


「今更照れんなよ」



そう、言った俺も結構照れてた


ずっと、抱きしめたかった


回した腕に更に力を込めると真優の細い身体が俺にぴったりと寄り添った


彼女の身体はきつく抱きしめると壊れてしまいそうで、危なっかしかった

でも、今は違った

昔より一回り小さくなった真優の身体だったけど、どんなにキツく抱きしめても折れることのない凛とした強さを感じた


頬に触れる真優の柔らかい髪と

甘い香りに俺ははやる気持ちを抑えようとしてた

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