第12話

理空が居なくなってからも、ずっとお守りのように持ってた合鍵。


まさか...合わないよね


鍵を差し込むとカチャっと開いた


理空...鍵まで一緒なの


そーっと中に入ると無造作に脱ぎ捨てられたシャツ、積み上げられた仕事の書類

その一つ一つがちっとも変わってなくて…

懐かしくて


奥の部屋を覗くと苦しそうにする彼の姿があった


大急ぎで買い物に行って、必要な物を揃え、目を覚まさない彼の傍らで看病した


男らしいあったかい手をそっと握ると無意識なのかギュッ握り返した


「理空...ごめんなさい

ほんとにごめんなさい

私もずっと会いたかった

抱きしめてほしかったんだよ

グスっ

理空、あのね、

ヘッドホン……壊れちゃったの

だから…グスっ」



ピクリと動いた彼

目を覚ます前に帰らないとと慌てて手を離して玄関へ走った



「真優…帰んなよ

病人、置いて冷てぇな」


彼の声が聞こえた


「起きたの?」


「こっち来て」


ベッドの横に座ると辛そうに起き上がろうとするから、手を貸すとそのまま包まれた


「理空、熱いよ。熱高いね、

雨に濡れたから.....ごめんね」


彼の熱い身体をさすると耳元に唇を寄せるようにして低い声で言った


「真優…ヘッドホンもういらないだろ?」


「え?聞こえてたの?」


顔を見上げると

優しく笑って言った




「ヘッドホン、もう必要ない

俺がいるから。

抱きしめてあげられるから」



真優の溢れてくる涙を親指で拭い、もう一度抱きしめると

彼女は腕の中で首を横に振った


「理空…ダメだよ

今の私じゃダメ」


「何がだよ」


「ちゃんと理空と向き合えるようになったらここに戻ってくる」


俺の胸に手を当てて真っ直ぐに見つめた彼女の目はあの頃の真優の目だった


「私も理空のこと大好きだよ。

ずっとずっと思ってた」


「なら、それでいいじゃん」


「だから…よ

大好きな人の隣にいるのに相応しい人間になりたいの」


「あー、あいっかわらず、頑固だな」


「それまでは、うーんとね、

友達…うん、友達に戻ろう」


「ふざけんなよ 」


「お願いします」


ペコリと頭を下げる真優


「あーー」


「ごめん」


「わかったよ。今まで待ったんだ。

楽勝だよ」


「ありがとう、理空」


嬉しそうに笑った真優の唇に触れるだけのキスをした


「ダメっ、友達…ンッ」


更に深く何度も


「ふぁ、もっ、友達はこんなことしないよ」


「海外ではするけどな」


「ばかっ」


「ちゃんと戻ってこいよ」


「わかった。

私……頑張るから」



「真優…もう頑張らなくていい。

でも、負けんな。

自分に負けんなよ」


「...うん」



理空の作品の公開日まで後、3ヶ月


私はきっとその日までにはあなたの側にいられるようになるから。

心の中でそう誓ってた



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