第11話

一晩中泣いた


昨夜降った雨は朝方止み、

太陽が眩しいぐらいだった


「あーあ、顔パンパン」


鏡に映った情けない姿を見て悔しかった

私はいったい何をしてるだろう


ずっと俯いてばかり



窓から見える青空を眺めてるとやっぱり浮かぶ彼の顔


「さっ、お仕事行かなきゃ」


女優の仕事だけでは食べていける程の収入もなく、以前から、駅前のフラワーショップでバイトしてた。

そのまま、続けさせてもらって、今ではアレンジメントもするようになった


辛いことがあっても、不思議と店に行って

たくさんの花と香りに包まれると気持ちが落ち着いた



理空と再会してから1週間

彼が見せた悲しい顔が片時も頭から離れなかった

私に出来ることは…



「真優ちゃん、今日、配達行く人いなくて、行ってもらってもいい?」


「はい、いいですよ」


「ここなんだけどね

場所わかるかなぁ?」


「わかります」



何度か行ったことのあるテレビ局


「理空...どうしてるかな?」


配達が終わって裏口に停めた車に乗り込もうとした時


「真優ちゃん!」


誰かに声をかけられた


「矢吹さぁーん、お久しぶりです」


「元気にしてたかぁ?

どうしてた?」


「元気です。今はお花屋さんです」


「そっかぁ。

それより、理空に会ったか?」


「え?...はい、会いました」


「会えたかぁ。良かったなぁ

理空はが真優ちゃんに会いたがってたからな

そっかぁ

今、また、理空はとちょくちょく一緒に仕事してるんだ。しかし、アイツも相変わらず無理するヤツだよなぁ、体調良くなってきたか?」


「体調?理空が?」


「知らないの?ひょっとして、会えたけど...」


「はい、もう…私達…」


「ごめん、てっきり、二人は」


「理空、どうしたんですか?

具合悪いんですか?」


「あー、先週から熱があるのに無理して仕事に来てて、ただの風邪だからって言ってたけど、大丈夫かなぁ」


「…風邪ひいてるんですか」


きっと雨に濡れたから…


「真優ちゃん、俺がとやかく言うことじゃないけど、理空は真優ちゃんを真優ちゃんは理空を必要としてるんじゃないか?

かけがえのない人なんじゃないか」


「きっと…そうですね」


「ハハ、真優ちゃん、正直だな。

まぁ、顔見れば、すぐわかるけどな

大切な人を思ってるって」


「もう、矢吹さん、やめてくださいよー」


「生きてるといろんなことがある。

躓いた場所でいつまでも止まったままだと先にある違う景色は見えないぞ。

そんなの、もったいないだろ?」


「はい...

そうですよね」


「じゃ、真優ちゃん、またな」


「矢吹さん、ありがとうございました」


「あーっ、それと

理空、帰国してからも真優ちゃんがいつでも来れるようにって前と同じマンションの同じ部屋にいるよ。

めちゃくちゃ、頼み込んで空けてもらってさ

アイツらしいよな」



すぐに会いたかった

私は迷いもなく理空の部屋へ向かってた


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