26-2.とんだ茶番劇ね


「いくつか誤解があるようだから、それを正していきましょうか」



 猫の子一匹いないかのように静まり返った第三談話室に、宝生寺桜子わたしの声がよく通る。



「まず、私は怒ってなどいないわ」



 恐怖による支配は、宝生寺家の令嬢という圧倒的な地位を使えば簡単だ。

 でも、簡単だからこそ、脆い。しばらくは効果があっても長続きはしないのは、歴史上の独裁者の末路を考えれば分かりきったことだ。

 そもそも私は怒ってなんかいない。

 宝生寺桜子わたしの怒りを買いたくない人は必ず、謝るために、ご機嫌うかがいのため集まる。そうやって集まった人に話を聞かせて、ウワサがでまかせだと広めてもらうためにブラフに過ぎない。

 目には目を、歯には歯を、真っ赤な嘘には真っ赤な嘘。春休みにやったのと同じだ。



「ただ驚いてしまっただけ。だって、まさか秋人との関係を恋愛関係などと思われていたなんて。想像すらしたことがなかったことなんですもの」



 心底おかしいと、控えめだけど肩を揺らして笑う宝生寺桜子わたしの姿に、戸惑いの輪が広がっていく。

 権力者の逆鱗に触れたと怯えていた子達は、時間が動き出したように顔を見合わせ、「どういうこと?」「嘘ではない?」と囁き合う。



「ふふ、いやだわ。私達のどこを見て誰がそんな風に言い出したのかしら。おまけに以前は、雪城くんまで巻き込んでいたそうじゃない。なかなか情熱的なおとぎ話ね、ふふふっ」


「あ、あの、桜子様……!」



 声を裏返しながら立ち上がったのは、南原さんだった。

 どうやら生贄にされたらしい。何を飲むかと聞いてきたのも、同じクラスなんだから機嫌をうかがってきなさいと特攻させられたのだろう。



「なにかしら?」


「いっ、壱之宮様のことは、その、お好きではないということでよろしいのでしょうかっ!」



 ここにきてまさかのド直球。周りの棟方さん達ですら、アチャーと額を抑えている。

 私は内心吹き出しつつも、宝生寺桜子の顔をキープして言い放った。



「いいえ、好きよ」



 目の前を茶色のしぶきが飛んだ。

 紅茶を吹き出しゴホゴホとむせる諸星姉妹に、ペーパーナプキンを差し出す。



「さ、さくら……」


「小さい頃から親しくしている幼馴染みだもの。憎からず思っているのは当然でしょう」


「さくららしいけどさぁ……」


「ああ、好きと言っても、もちろん恋愛感情などではないわよ。あくまで友愛。愛情の種類は一つではないわ」



 なぜ恋愛関係のウワサを払拭したいのに、あえて好きと言い切ったか。

 それは『反動形成』を逆手に取るためだ。


 人は本音を隠すために、本音とは逆の言動をとることがある。これを心理学の用語で『反動形成』と呼ぶ。

 恋愛的に分かりやすい例を上げれば、「あんたのことなんて全然好きじゃないんだからね!」と言うツンデレ美少女だ。

 本当はめちゃくちゃ好きなのに、ついキツい言動とったり避けたりしてしまう。このツンデレのツンの部分が反動形成である。

 つまり感情的に否定をすれば、嫌よ嫌よも好きのうち、思春期特有の照れ隠しと思われかねない。

 だったら正々堂々と、なんとも思わないからこそ好きだというのが安全策だ。



「──でも、たとえ本当のことでも、また誤解をしてしまう場合もあるわよね。実際すでにこの中に、私の言葉には信ぴょう性がないと思っている方が複数いるようだから」



 言いながらスッと目を細め、何人かの顔を見る。

 それは全員、宝生寺桜子わたしの否定の言葉を信じずに「嘘ではない?」と囁き合った子達だ。目があった途端に青ざめ、口をきゅっと結ぶ様に笑みを深める。



「だから私、秋人に話してきたの。私達が陰でウワサされてるみたいよって」



 青ざめる人数が増えた。

 特に顔色が悪いのは秋人ファンの子達。宝生寺桜子わたしだけでなく、スクールカースト第一位の逆鱗にまで触れてしまったのではと思ったのか、今にも泣き出しそうだ。



「それでその時の会話をね、こっそり録音したの。聞いてもらえるかしら」



 宝生寺桜子わたしはゆっくりと席を立つと、壁際のハイエンドオーディオの電源を入れる。スマートフォンとオーディオを軽く操作すれば音声が流れ始めた。

 全員の意識がオーディオに向かうなか、宝生寺桜子わたしは最も左端の窓を開け、入り込む風に髪を遊ばせる。



『ねぇ秋人、知ってる?私達、恋愛関係だとウワサされたみたいよ』


『はあ?!』



 白々しい宝生寺桜子わたしの声から始まり、すっとんきょうな男声──壱之宮秋人の声が続いた。



『おま、はあ?!誰がそんなくっだらねぇことを……』


『ウワサの出所は分からないわ。でもまったく、私達のどこをどう見たらそんな話が出てくるのでしょうね』


『……どうせ、幼馴染みって肩書きから妄想膨らまして、現実との区別がつかなくなったんだろ』


『妄想ね。ふふっ』


『なんだよ』


『あなたらしい意見だと思って』


『他に答えあるか?こんな根も葉もない話に』


『私は、誤解を招くような言動をしてしまった私達が悪いのかもと思っていたの。火のないところに煙は立たないと言うでしょう?』


『その火が妄想なんだよ。始めっから他人を色眼鏡で見てる奴は、他人が何をしたって自分が見たいようにしか見ない。俺らを見てる気になってるだけで、理想を押し付けてるだけだ』



 秋人の静かな声を最後に、私はスマートフォンを操作して音声を止めた。

 談話室は再びしんと静まり返る。恐怖からではなく、困惑と驚愕、そして憐れみと罪悪感から、誰もが口を閉ざし目を伏せていた。

 宝生寺桜子わたしは揺れる髪を撫でつけながら、そっと口を開いた。



「秋人は妄想と言ったけれど、やっぱり、誤解させてしまうような言動を知らず知らずに取っていた、私達の方に問題があったのだと思うわ。ごめんなさいね」


「さくらは悪くないよ」


「嘘を言いふらしてた人が悪いんだよ」



 諸星姉妹が気遣わしげに言う。

 瞬間、重い沈黙が弾け飛んだ。



「そ、そうですわ……!」


「桜子様が謝罪をされる必要などありません!」


「でも、恋い慕う人が、自分以外の異性と一緒にいるのは不快に感じるものなのでしょう。先日友人がそう言っていたわ。私は皆さんに対して……」


「いいえ!わたくし達が浅はかだったのですわ!」


「お二人のお気持ちも知らず、自分達の理想を押し付けていたなんて……。許される行為ではありません」


「悪いのはお二人の絆に邪なことを考えた私達です。どうかそのようなお顔はなさらないでください」



 一人、また一人と。申し訳なさそうな顔で、中には感情的に立ち上がってまで、次々に謝罪の言葉を口にする。

 何人かは「壱之宮様の寂しそうなお声……!」だの「おいたわしい!」だのと顔を覆って嘆き始めた。


 ────フッ、計画通り!


 人は集団のなかで、周りと同じ行動を取ってしまいがち。空気を読むというやつだ。

 そこで私は事前に諸星姉妹へ、私が謝ったらそれを否定して、ウワサが嘘だったと受け入れる発言をしてもらうよう頼んでいた。もともと嘘だと分かっている二人は快く引き受け、そして実行してくれた。

 すると周りが黙っているから黙るべきという空気が打ち破られた、ウワサが嘘だったと受け入れる空気に変わる。諸星姉妹の言葉に同調する人が必ず出て、一人が同調すればさらに同調する人が増えるはずだと、私は事前に社会心理学の本を読んで学んでいたのだ。

 同調の輪が広がった先にあるのは全会一致。この場にいる全員がウワサが嘘だったと受け入れるだろうという計画だったけど、まさかこうもうまくいくとは……。


 でも計画はまだ折り返し地点。二度とこんなウワサが立たないよう、徹底的にやらなければ。

 そのために協力してくれた人達がいるんだ。私がここで失敗するわけにはいかない。最後まで宝生寺桜子を演じきれ。



「皆さん、そんなに気に病まないで。ウワサは根も葉もない嘘だと信じてもらえただけで私は充分よ。それに、人の心の動きを考えれば、仕方がないことだから」



 ピクピクと上がりそうになる口角を隠すため、私は手を口元に当て、宝生寺桜子の顔をキープする。



「心理学の観点から見たら……と口で言うのは簡単だけれど、理解のためにはコレを聞いていただいた方が良さそうね」



 宝生寺桜子わたしは再びスマートフォンを操作した。

 オーディオから流れ出したのは、先ほどの続き。



『二人ともここにいたのか。ん?なにこのメ──』



 ドゴンッと派手な物音に遮られたが、その声は紛れもなく雪城透也。

 聞こえたそれに、雪城ファンの子を中心にざわつきが広がった。



『おいおい大丈夫か透也』


『あらあらまあまあ。フフフフ』


『…………大丈夫、少しよそ見をしていただけだから』


『でもちょうど良かったわ。私、雪城くんにお聞きしたいことがあったんです』


『僕に?珍しいね。いいよ、なに?』


『フランスにいらっしゃる婚約者さんについてなんですが』


『は?!え、ちょ、ちょっと待って。宝生寺さん、その話は……』


『そういうお話を耳にしたもので。水臭いですね、言ってくださればお祝いいたしましたのに』


『……宝生寺さん、その話はどこで聞いたの?』


『この成瑛の中でですよ』



 オーディオから流れる宝生寺桜子わたしのコロコロとした笑い声に、談話室のざわつきが拡大する。

 うわっ本人に言ったのか。マジかよ。なんてことをしてくれたんだ。でも答えが聞けてラッキー。

 そんなニュアンスの空気が流れるが、まだまだ続く音声に雪城ファンを筆頭とした全員は耳をすまし続けた。



『楽しそうなところ悪いけど、僕にそんな人はいないよ。世界中のどこにも。断じていない』


『でも、あなたが女性と仲睦まじげに歩いていたと』


『たぶんそれはいとこだよ。母方の親戚が日本に遊びに来て、買い物に引っ張り回されている姿を見られたんだろう』


『母方のご親戚というと、フランスにいらっしゃる方ですよね。なるほど、勘違いされてしまうぐらいの距離感でもおかしくはありませんね』


『そういうこと。まさか本気で信じてたの?』


『半々ですね。あなたが下手な嘘や誤魔化しはしない人だとは思っていますが、そういったデリケートなことは誰だって話題に出したがらないものですから』


『そんな根も葉もないウワサをされていたとは思わなかったから、話題に出さなかったんだよ。いい迷惑だ』


『あらっ、怒ってます?』


『少しだけね。でも、ウワサなんてしょせんはでまかせだ。例え少なくても本当のことを知っている人がいてくれるなら、それでいいよ』



 今度は宝生寺桜子わたしが操作しなくても、音声が終わる。

 スマートフォンのボイスレコーダー機能を使って録音した会話そのものが、そこで終わったからだ。

 またもや全員が黙り込みしんと静まり返るなか、宝生寺桜子わたしは微笑みながら「さて」と口を開いた。



「たしか雪城くんのウワサは、どなたかが、彼が女性と歩いているのを見たのが始まり。そうだったわよね、棟方さん」


「えっ!?あ、はい、そうです」



 突然指名された棟方さんは、ビクンと跳び上がりながらも頷いた。

 その近くにいる南原さんや北園さんも頷き、雪城ガチ勢である傘崎さんなんかはヘッドバンキングの如く激しく首を振って、今後の話の展開に期待しきった目で見てくる。

 よろしい。その期待、全力で応えて差し上げましょう。



「その正確な目撃者はどなたかしら?ご存知の方は?」


「正確な……?」


「それは……」


「いないのね。つまり出所のわからない情報を疑うことなく信じたと。典型的な『ウィンザー効果』ね」



 宝生寺桜子わたしは頬に手を当て、憂いのため息を吐く。



「第三者の褒め言葉はどんなものより効果がある。とあるミステリー小説のセリフから名付けられた心理学用語が『ウィンザー効果』なのだけれど。要するに人は不思議と、第三者を介した意見や感想は疑うことなく信じ込んでしまうものなの」



 例えそれが根も葉もない、真っ赤な嘘でもね。

 そう淡々と、当たり前のことのように語りば、誰も彼もが顔を見合わせる。



「そうして間違った情報が広がり続ければ、いつしか『同調圧力』と『バンドワゴン効果』によって否定意見が上がらず、聞いた誰もが真実だといっそう強く思い込む。さらにウワサが真実だという先入観があるため、ウワサの本人がいくら否定しても『確証バイアス』により信じてもらうのが難しくなる。嘆かわしいことだわ」


「さくらぁ。ごめん、難しくて瑠美ちょっとわかんない」


「璃美もわかんない。バカにもわかるように言って?」


「そうねぇ、今言ったのは名だたる哲学者や心理学者が提唱したものだけど……」



 宝生寺桜子わたしはくすりと笑い、



「端的に言えば『世の中には自分好みの、自分に都合のいい情報だけが入ってくる素晴らしい耳をお持ちの方が多い』ということかしら」



 窓枠に座り、風に髪を揺らしながら笑う宝生寺桜子わたしに諸星姉妹は棒読みで「わかりやすーい」と言い、他の子はまたもさあっと顔を青くさせた。



「まあ、かくいう私もその耳の持ち主なのだけれどね」


「さくらも?」


「ええ。自分の理解を超える出来事が起きたら、今の自分の基準で判断するしかないもの。そこで勘違いや食い違いが生じるのは、誰にでもあること。仕方のないことよ」



 でも、と言葉を続ける。



「本当に良くないのは、自分で考えないこと、自分の意見を持たないこと、自分と違うものを悪と決めつけ排除しようとすること。空気を読むのも他者を信じるのも大事だけれど、冷静かつ客観的に考えることも、とても大事だと私は思うわ」



 そう、勘違いだの意見の食い違いだのは誰にだってあること。

 事実私も、フランス美女の件を初めて聞いた時「ふうん、そうなんだ」と特に疑うことなく受け入れた。むしろ本人に聞いてからも若いツバメがどうのう考えたのだから、客観的に考えるとタチが悪すぎる。

 だから自分がウワサされる側になった途端、ウワサしていた彼女達を批判する資格はないのだ。

 ウワサ払拭のために宝生寺桜子の演技をして、怒ったなんて嘘の情報を流したけれど、本当に怒ってなんかいない。私はただ驚いて────怖くなっただけだ。なんとかしないと本来の宝生寺桜子のような結末になってしまうかも、と。


 何はともあれ、もう天秤の傾きは逆転した。あとは締めるだけだ。


 私は軽く息を吸ってから、宝生寺桜子わたしらしくパンパンと軽く手を打ち鳴らし注目を集めた。



「皆さんは何が正しいか自分の中で判断ができているはず。だからこの話はもうおしまい。帰りが遅くなってはいけないから、今日はこれにて解散としましょう」



 その一声により、一気に解散の空気になった。

 それぞれ使っていたカップやコースターを片付け、窓辺の宝生寺桜子わたしに律儀に謝罪や挨拶を告げてから集まっていた子達は去っていく。ちょっと盗み聞きをすれば嬉しそうに「他の子にこのことを伝えてあげないと」と、手分けして情報拡散をする算段を立てていた。

 二大巨頭が揃ってフリーだという情報は、ファンにとっては嬉しいものだろう。……まあ、本当は秋人には千夏ちゃんという最愛の人がいるのだけれど。

 ただ中には宝生寺桜子わたしに対して、本当に申し訳なさそうな顔をする子もいた。明日、改めて怒ってなんかいない、ウワサが嘘だと信じてくれて充分だと伝えた方が良さそうだ。



「うまくいったようね。二人とも、こんなことに付き合わせてしまってごめんなさい」



 唯一帰らずに座ったままだった諸星姉妹に歩み寄る。

 すると「近いうちにお詫びをさせて」と言いながら椅子に座れば、二人は同時にツインテールを揺らして首を振った。



「そんなのいいよ」


「璃美も瑠美も、やりたくてやったんだもん」


「さくらは何かあると、いっつも一人で悩んで、一人でどうにかしちゃうから」


「さくらは助けてくれるけど、助けさせてくれないから」


「だから今日は頼ってくれて、手伝わせてくれて、嬉しかったよ」



 瑠美が言って、璃美が言って、それを繰り返して最後に二人の声が重なる。

 いつもの、私と二人のやり取り。

 その瓜二つの笑顔と声に、急に終わったんだと、なりたくもない宝生寺桜子でいる必要はもうないんだと実感できた。



「……助けてって、私、二人になにかしたことあった?」


「あるよ」


「あ、試験勉強?」


「それもだけどぉ、それじゃないかなぁ。さくらにとっては当たり前のことだから、分かんないだろうねぇ」



 また、それか。

 二人分の一つの声に、意外と温かかったクラゲ水槽の感覚が指先に蘇る。



「ねぇねぇ、さくら」


「今度はなに?璃美」


「むふぅ〜」


「さくら」


「瑠美までどうしたの?」


「いひぃ〜」



 呼ばれたから応えただけなのに、なにやら二人は左右にゆらゆら体を揺らしてご満悦だ。

 可愛いけど、今ちょっと疲れて頭が回らないから。バカにもわかるように言ってほしい。

 なんなのよと苦笑しても、二人は顔を見合わせてきゃらきゃら笑うだけだった。



「まあ、二人が楽しそうならいいわ。ところでさっき瑠美のスマホ震えてなかった。お迎えの車が来ているんじゃないの?」


「あ、うん、そうそう」


「そうそうって、なにをのんびりと……」


「だって途中で帰るのヤダったんだもん。ね、璃美?」


「うん。まこちゃんにも、さくらの思い通りになるか見ておいてーって言われてたし」


「真琴には私から連絡しておくわ。私なんかの都合で待たされる運転手が可哀想よ」



 早く行ってあげて、付き合ってくれてありがとうと言って帰りを促せば、二人は渋々といった顔で立ち上がった。



「さくらは?」


「お迎えは?」


「私は……ちょっと疲れたから、少しここで休むわ」


「んー……わかった!」


「また明日ね」



 手を振って、去っていく親友を見送った。ついでに部活中のもう一人の親友に、全部うまくいったとスマートフォンでメッセージを送っておく。

 でも、まだだ。ウワサの払拭作業は終わったけど、計画はまだ終わっていない。

 私しかいない第三談話室でどっこいしょと気合を入れて立ち上がる。開けっ放しにしていた窓の、最も左端の窓に近づき、



「終わったわよ」



 窓から軽く顔を出して、左側を見る。



「ああ、聞こえてた」


「お疲れ様」



 隣の部屋──第四談話室の最も右端の窓を開けて、ずっとこちらの会話を聞いていた秋人と雪城くんの顔を見て、私はため息をついた。



「とんだ茶番劇ね」








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