EPISODE 06 異変III
「誰っ……」
ちょうど
「……ん!?」
「
俺と
「……ふうっ」
ため息というか、「やっぱりね」と何か
「
「2人がいると分かった時に、もしかしたら『いるのかな!?』とは思ったのだけど、まさか本当にいるとは」
女子2人の前に立ち止まった人影が、俺と
身長は女の子としてはそう高くもなく、体型も太くも細くもなく、
「
名前を覚えるのが苦手な俺でも認識している数少ない同級生の女の子、
中学の時、助っ人で陸上競技会に引っ張り出された
「どうして、
疑問符が残っている表情ながら、
本来俺たちがいる時間帯よりも過去、しかも、ピンポイントで場所まで突き止めてやってくること自体、出来すぎているというかあり得ないことなのだが。
しかも、男子2人にはその予兆みたいなモノはなく、女子2人は事前に知っていたような反応。
過去に飛ばされるそれだけでも充分トンチキな出来事なのに、さらにその出来事に関わる人間がまだいたとは。不思議好きなやつ(どっかの小説にあった、その手の不思議が好きな女子高生とか)ならこの状況で楽しめるのだろうけど、そうではない俺にとっては、なんというか少し疲れるような話ではある。
「今日は顔見せというか、なんというか……」
困ったような顔で
「どうやら私は、あんたたちのサポート役になりそうな感じなんだけど」
また、いつかのような展開だ。
いきなりこの『
入学以降、こう訳の分からない状況が続くと、さすがに勘弁して欲しいとも思ったりするし、せめて、もう少し説明とかあっても良さそうなモノだが。
「説明したいところだけど、時間が無いのでついてきて」
何が起きるのか分からないが、今居る場所、教会の前からどこかに連れて行きたいらしい。
「じゃあ、行きましょ」
迷いも無く、俺たちにそう告げてくる
そう言うや否や、
教会の出入口の前、ちょうど交差点の角になるような位置まで歩くと。
「ちょっと、場所を移動してもらうわよ」
「……学校!?」
今日何度目かの
「ん?」
入学して見慣れてきた建物になった体育館なのだが、それでもすぐに何か違和感みたいなものを感じた。体育館だけじゃない、校舎や運動場、南側に見える小学校の建物、そして空の色やグラウンドの土の色、全てがどこか黄色?金色?っぽい輝きに包まれているのだ。
しかも、空気の流れ、循環も感じられないというのか、目に見える範囲内にあるる木々の動きとか、流れていく風の匂いとかがない世界というべきか、とにかく「生きている」感じがしないのだ。
昔読んだ小説で、主人公がいる場所の空が半球形のドーム状みたいな天井になっていて、主人公の周囲に建っている建物から草木まで、それらが一色で染まっている空間という描写があったが、それに近いというか、空の色から建物から何から黄色っぽい輝きを発している。
そんな状況を把握しようとしているのは、俺だけじゃ無かった。首を左右に振りながら周囲を確認している
「みんな無事に移動できたのね」
俺たちと少し離れた場所にいる
黄色く輝いている体育館、校舎からに続く渡り廊下に立っている
体育館の入口を入ると、すぐに左右に2階に上がる階段があるのだけど、何の迷いも無く
「行くしかないよな」
「ないよなぁ」
そんなことを俺と
(女子2人、何をそんなに意識しているのか?)
普段なら俺たちの会話に加わってくる
そんなことを感じつつ建物の2階、体育館の出入り前までやって来る。
壁で仕切られたエントランスのスペースも黄色く輝いているのだが、不思議と目に刺激が来ないというのは、俺たちがこの輝きに慣れてしまったのか、そもそもそういう輝きなのか、後に振り返ってみても俺自身も分からないままなのだが。
「対戦相手は先に来ているみたいね、中に入るわよ」
中央にあるメインの出入口、その前に4人が揃ったのを確認した
「『対戦相手』って、何だ!?」
俺が心の中で思っていたことを、俺より先に
「ついて行くことになった時点で、俺たちが何かさせられるのは予想出来たし、
一度、言葉を句切る
「だったら、せめて俺たちに何をさせたいのか、何をすればいいのか。それぐらいは教えてくれても
「そうね。
少し考える
「中に入って、実際に『誰が』待っているのか。それを確認した方が良いのかも」
そう言うと、
「どうして……!?」
「なぜっ!?」
足を踏み入れた
遅れた入った俺や
「……まさかっ……!?」
さすがの俺も、そしておそらくは
「ちょっと久しぶりって感じかな」
俺たちがやってきたのを見て最初に言葉を切り出したのは、俺たちから見て左側、山の斜面側に立っている長袖ジャージを上下に着用している女子だった。
そして、
「学校ではすれ違っているけど、話す機会なかったもんね」
その女子続く形で、俺たちから見て右側、運動場側に立って同じく長袖ジャージを身につけている女子が口を開く。
「……なぜ、この2人なんだ!?」
中学では部活関係に顔が広かった
「あ、そうだった。男子2人はコートの外から見ていてね」
こっちに来いという感じで、4人から少し離れた
俺たち2人が壁際まで移動すると、背後がピンク色の輝きで覆われ、次の瞬間には、
「今から10分程度、柔軟体操とかしておいてね。終わったら対戦だから」
「だって、4人に向こうの2人には聞かれたくないし、そして向こうも私には言われたくないでしょうし」
当然でしょう?という顔をする
体育館で待っていたのは、中学でも一緒だった双子姉妹。
最初に話しかけてきたのが、姉にあたる
高校は、姉の
で、妹である
まぁ、さすがに家庭の事情とか本人の考えとかもあるかもしれないので、それ以上に話は大きくならなかったと
「そうなのか?」
「そうだよ、
そして外見はといえば、さすがは双子というのか、慣れていない人には同じ髪型だと判別に困る人もいたとか。
髪の毛は2人とも肩の辺りまでの長さだけど、そのままストレートに流すか耳の横辺りで結ぶ(サイドテールと言うのか?)のが姉の
それでも分かりにくいのかもしれないが、中学の時、
身長は、ぱっと見たところ、
似たような背格好なだけに、区別が付きにくいというのも納得出来たりする。
で、本題というか、「
どうもこの
「まだ
なんでも、小学校高学年から中学校の頃、部員でもないのに運動部に「
正規の部員たちと変わらない、時にはそれ以上の成績を出していた
しかし、
そんなことを考えていた時、ふと頭の中に浮かんできた景色があった。
ちょうど今居る体育館のような場所、多分、
天井近くにある窓の外が暗く、体育館を照らす照明が反射しているのを思うと、時間としては夕方から夜の時間帯なのだろう。
そして俺の視界に見えたのは、運動しやすい私服というのか、学校の体操着やら個人のスポーツウェアやら、思い思いの格好をしたおそらく小学生であろう、10数名の男女の一団が一列になり、順番にバスケットボールを手に持つと、出発地点からドリブルしてゴールにシュートを決めている様子だった。
そのゴールを決めている子たちの顔を見ると、半分ぐらいは
視線の奥、ゴールの後ろ辺りに大人たちが数名、パイプ椅子に座ってシュートする子たちを見ているので、ここに来ている子たちの保護者なのだろうと思う。
そんな中、上は何かキャラクターの絵柄のTシャツにジーンズで出来た短パンを身につけた女の子が目に留まった。
(あれ、これは
顔立ちはやや幼いが小学校高学年ぐらいの彼女だとしたら、そう言われて納得するような感じの子が、軽やかに走ったかと思うとシュートを決めている。
次に出発地点からスタートしたのは、どう見ても小学校高学年頃の俺自身だ。運動はやや苦手だったので、確か小学5年生だったか?半年間ほど、市が主宰する「市民こどもバスケット教室」とかいう名前の教室に通わされたことがある。土曜日の夕方、6時から30分程度の時間だったと思うし、月謝もそう高くなかったと記憶には残っている。
目の前に見える小学生の俺は、この時は上手くゴールボードにボールを当てシュートを決めていた。珍しいともあるもんだ……とそう思いながら見ていると、出発地点に立っている女の子たちに気がついた。
1人は長い髪の毛をポニーテールにし、上半身は何かのトレーナーにキュロットスカートを履いている姿、その顔を見ると
そしてその
(これは……
最初は分からなかったが、幼い顔立ちの中にも今の
その紺色のジャージを着用した女の子は、講師助手らしき女性からボールを受け取ると、軽やかに助走からシュートを決めた後、床を跳ねたボールをこれも軽やかに受け止めていた……。
「
声に反応して俺たちを見る
「小5の時だったか、
そんなこともあったよなぁという顔で、
「しかし、全く記憶に残っていないんだよなぁ」
「何が?」
俺が何気なく漏らした言葉に、
「あのバスケ教室に、
「そんなこともあるさ、俺だって小学校の時の習い事、そこに『行っていた』ことは覚えていても、『何をしていたか』までは覚えてないし」
そう
「あ、準備が出来たようね」
思い出したかのように
その声で女子4人がいる体育館の中央部に視線を戻す俺と
少し前まであったピンク色の雲は消えていて、中学の指定ジャージ服みたいな格好をした
そして反対側、ステージに近い側には、こちらも同じように準備万端という雰囲気で
「私が、合図をすることになっているみたいね」
ため息交じりに
すると、その甲高い
中央にある白線からステージ寄りと出入口寄りの2つに広い体育館が分かれ、その両方にバスケットコートが描かれた床と近代的なバスケットゴールが出来上がっていた。そしてご丁寧にも、中央にはバスケットボールの球が1個ずつ置かれている。
で、さっきのピンク色の雲ではないが、コートの周囲は何かガラスみたいな大きな透明なモノで仕切られていた。
イメージで言えば、スカッシュとかいう室内で行うテニスに似た競技、それを行う空間みたいだと言えばわかりやすいだろうか。
そして、どうやらその空間の外にいる俺と
「
体育館の中に出来上がった空間を見て、
確かに、バスケットボールには『
「これ、どっちが何点入れたら『勝ち』になるんだ?」
点数だったりゴール数(例えば、先に3ゴールを決めた方が勝ち)だったりとか、条件が地方や地域で違うことがある競技なので、今から始まる試合での勝利条件はどうするのか?俺も気になったので、
「今日はいきなりの試合なので、どちらかが先に3本ゴールを決めれば、その人が勝ちになるわ」
まぁ、問答無用でこの場所に連れてこられて、しかもそこで試合をさせている時点で、「いきなりの試合」というのも無理がある言い方なのだが、でもしかし、この
「得られる
「うん、そういうことになるみたいね」
確認するかのように
そういうルールだということには、俺自身、「それもあるか」と思うが、この
なぜ
俺は言葉には出さなかったが、そういう思いで
「じゃあ、試合開始ね」
一度大きく深呼吸をすると
笛の
「
次に何が起きるのか分からないまま、「注目してくれ」と言わんばかりに明るくなっているコートに立つ
で、じゃんけんに勝った
少し間を開けるかのように、コート内の2人を見つめている
一方、コートの中では、中央の円の部分(何というのだ!?)の上、中心線から等距離の場所に
「いきましょうか」
動かしていた足を止め、
そこからの動きは激しかった。
ゴールに向けてドリブルをしながら走り出す
最初のシュートが外れた
「こんなに運動できたのか、
驚いた顔で2人の動きを見ていた
女子のバスケットボールの試合は、中学の時に部活の試合を体育館で見たぐらいだが、見たことは覚えていても実際の試合内容というか、女子たちがどういう動きをしていたかは忘れてしまっている。
それだけに、今、動画で見るような男子バスケの試合さながらに、激しく動いている
試合の方はそれぞれ1本ずつシュートを決め、
その後は、再び一進一退のような感じでボールが跳ねる音と靴から発する音、そして2人の荒い息づかいだけが聞こえてくる時間が続いた。
「……さすがは
観客になったかのように
高校に入って以降、運動とは縁遠いハズの
そうこうしているうちに、ドリブルして攻めようとする
「
笛を吹き終えた
双子なら、身体のつくりが同じならば、運動能力とかもそう変わらないのか!?と思ったりもするのだが。
「普段はどうなんだろ、中学の時は運動部の子たちほどじゃ無いけど、そう運動が出来ないという様子じゃなかったけどね」
俺も
しかし、だ。
それ以上に気になるのは
さっきまで見ていた
試合が始まる段階になった今、冷静に状況を考えてみるとこんなことを想像してしまう。
その思いは
ただ、俺と
「じゃあ、始めようか」
少し間を開けてから、
どうやらこちらも、じゃんけんに勝った
一方、コートを選択する形になった
最初こそボールをドリブルしながら攻める
「なにっ!?」
俺も、
ドリブルをしながら
投げられたそのボールは一直線にゴール方向に飛ぶと、軽くリングに当たってゴールリングの中に吸い込まれていく。
ゴールリングから落ちてきたボール、それが床に跳ねて響く音を聞くまでボールの行方を見ていた
「……
それこそ「信じられません」とでも言いそうな顔をしている
そして俺たちも初めて見る
試合といえば、
「試合終了!」
笛を吹いてから発した
と同時に、
「本当に2人別々の学校なんだな」
「
「お疲れ様」
「ありがとう」
「そっちもお疲れ様」
「どういたしまして」
俺たちの前に2列に自然と整列した
「
「はいっ!?」
「……正しく伝えないと
今の俺に理解不能な言葉をかけてくる。次いで
「私は3年間、部活でライバル関係になるみたいだから、その時はよろしくね」
と
そして小声で「耳を貸して」と言ってくるので、少ししゃがんで
「
何を言うのかと思っていたら、
話し終えた
「じゃあね」
「また学校で」
「また会いましょ」
光の輝きの中から
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