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「ママー」


「──どうしたの美織〈みおり〉?」


「あのね、けんじくんがいじわるするの」


「そっかぁ。でもそれは、けんじくんが美織のことがかわいいって。構ってほしいって思ってるからそうしてるのかもしれないよ?」


「えー、そんなことないよぉ」


「うーん。なら、ママがひとつおとぎ話をしてあげる」


「おとぎばなし?」


「あるところに幼なじみの女の子と男の子がいました。いつも一緒だった二人はとっても仲がよかったのです」


「とてもなかよしだったの?」


「でも、ある日。男の子が急に冷たくなったのです。話しかけてもそっぽを向かれ、ついてくるなと言ってきたのでした」


「それはどうして?」


「なぜならば、その男の子は他の男の子から冷やかされて恥ずかしい思いをしたからです。


そんなぶっきらぼうな男の子は次の日、女の子にこんな話を持ちかけてきました。



『──タイムカプセルを埋めよう。十年後の自分へ何かを残すんだ』



女の子は面白そうだと頷いて、たくさんのおもちゃをお菓子の缶に詰めて埋めました。男の子は一枚の手紙でした」


「ねぇねぇ、ママ。その女の子はどうしておもちゃだったの?」


「なんでなんだろうねえ。女の子もあとから気づいたことではあるんだけど、それはもしかすると、その男の子に一生ついていきますよーってアピールだったのかもしれないね」


「ろまんちっくだー」


「でね、話を戻すとね。その男の子がタイムカプセルとして埋めたのは、未来の自分への手紙なんかじゃなくて……その女の子への遠回しのラブレターだったのです」


「わーっ」


「女の子はこっそりそのラブレターを持ち帰って読んでしまいました。


雨でグシャグシャになったその手紙には、口では言えない気持ちが、男の子らしい力強い字でたくさん書かれていました。


──女の子はびっくりしました。その男の子の手紙と入れ替わるようにして、女の子は自分の気持ちを書いた手紙をタイムカプセルに入れ直していたのですが……“その時手紙を読んで初めて”、女の子はその気持ちの正体を知ったのです。


その女の子の名前は『しおり』」


「えっ、それって──」


「そして……男の子の名前は──」

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春夏秋冬-コイビヨリ- ロリじゃない @kuritu

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