第6話
言わずと知れた飛行用の道具の大定番。
突出した特徴はないが、その分安定しているとも言える。
ただ、そもそもの飛行技術が私よりも高いノーマは杖を使ってくることから、私が同じものを使ったところで万に一つの勝ち目もない。
選考外。
杖に比べると使用者の割合はぐっと下がるものの、愛用者は一定数はいる。
ちなみに、乗るときは鞘に入れて乗るのが普通。抜き身の刀身にそのまま腰掛ける人はいない、と思う。太ももとか切れそうで怖いし。
出力そのものと安定感は杖に比べて劣るものの、
その乗りやすさ、というか座りやすさから、剣と同程度の愛用者はいる。ここまでがいわゆる
剣とは対照的に
直線が多目の空路であれば選択肢に入る。これも実技試験の空路次第。保留。
最大瞬間出力だけで言えば、多数派のいずれをも凌駕する。ただし
挙げてはみたものの、私には扱えそうにない。最悪、墜落もあり得る。
比較的最近になって注目を集めつつある、武器以外の
船漕ぎにとっては使い慣れた道具だが、漕ぐのに使うのと櫂そのものに乗るのとではまた別物だと思うのだけれども。
乗り心地や性能は悪くないという話だが、飛行から戦闘になった時には役に立ちそうにない。実技試験の時だけって考えればなくはないような気もするけれど、私は船乗りでも船漕ぎでもないから相性は試してみないとわからない。要検証。
私は一人、図書館で付与飛行に使う道具について頭を悩ませていた。過去の資料や書物を集めては読み耽り、私に合う道具を探す。
私でも扱えるもの、ということで考えると剣か槍を選ぶしかない気はするものの、それでノーマとサウラに勝てるのかと自問したところで返ってくるのは
何故か私はノーマとサウラの勝負に巻き込まれてしまった。拒否権を主張はしてみたのだけれど、二人は聞き入れてくれず、了承せざるを得なかった。
後になって考えてみると、私に
しかしそれを問い詰めたところで、既に私は勝負を了承してしまっているのだ。悪びれもせず肯定する二人の笑顔しか想像できない。
ノーマとサウラとは初等部からの付き合いで、今年でもう五年目になる。学院に入る前からの付き合いであるカレンを除けば、一番長く関係を続けてきた間柄だ。
そんな私に対して、二人して非道い仕打ち――そう思ったところで、一つ思い出したことがある。そういえば、以前私が二人に筆記試験の点数で勝負を挑んで生菓子を奢らせたことがあったんだった。美味しかった。
今回の勝負は、あの時の勝負に対する意趣返しのつもりなのだろう。そうであれば仕方がない、私には勝てない勝負を甘んじて受けるしか選択肢はなかったということだ。
とはいえ、私だって何もせず負けるつもりはない。
「何かいい道具は見つかりそうかー?」
フューリル先生の間延びした声が、私の意識を現実に引き戻した。
「聞いたぞー、次の実技試験での勝負のことー」
にこにこと、笑顔で先生が歩み寄ってくる。初めて先生を見た人にはとても笑顔を浮かべているようには見えないだろうけれども。
私が慌てて立とうとすると、先生はそれを手で制した。仕方がないので椅子に座ったままお辞儀をする。
先生は
「何か問題でも?」
「過去に学ぼうとする姿勢は、教師としては評価しないといけないんだろうがなー」
しかしそれでは勝てまい、と。先生の言いたいことはそういうことだろう。
「この中で可能性があるとしたら櫂くらいだがー……まー、それも相性がよければ、だなー」
そう言われてしまい、私はがっくりと肩を落とす。
私が飛行技術で二人に劣っているのは明らかで、次の実技試験までという短い時間では到底追い付けるはずもない。
そうであれば、杖に勝る性能を発揮できる、私と相性のいい道具を見つけ出すしか勝利への道はない。
「知ってるかー?
悪どい顔で先生が笑う。
というか、いつの間にか賭けが行われていた。恐らくは
実力差はわかっているとはいえ、自分で思うのと周囲に突き付けられるのとでは別の話だ。
思わず眉間に皺が寄ってしまうのも仕方がないと思う。
「悩める生徒に、何かないんですか?」
思ったよりも低い声が出てしまった。
しかし先生はそんなことは気にした風もなくくつくつと笑う。
「教師としては特定の生徒に肩入れはできんなー。だが、ふむ……そうだなー、一つだけ
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