The RoseQuartz②
子どもを抱えながらエキウムと場所を入れ替えて魔法壁を作り、Gloryによって弾き飛ばされて来た瓦礫を防ぐ。
エキウムに子どもを抱かせて抱え上げ、走りながら体を空に飛ばし、Gloryの顔と同じくらいの高さのビルに立つ。
「決めたよエキウム……俺はこの子を幸せにする為に戦う、絶対に生まれてきて当たりって思える様に。だから力を貸してほしい」
「んー、なら私の夢を使って」
「でも、夢を取り出すって事は、エキウムの夢を……」
「さぁ、踊ろう……まで」
エキウム特有の独特の雰囲気を纏い始め、安心する温かさに溢れた手を取り、体を引き寄せて胸から夢を取り出す。聞こえなかった最後の一言を振り切ってgloryに向き直り、ビルの屋上から飛び降りる。
「小さいGloryまで集まって来たよ乃音、もうすぐそっちにミラ姉が行くから」
「もう捉えたダリア、だからさっさとこの機体のリミッター外せよ!」
瓦礫の奥から飛び出してくる小型のGloryを声で気絶させ、エキウムの胸から出て来たマイクスタンドのようなもので力任せに脳天を叩き割る。
大型のGloryに捕まらないように立ち回りながら小さなGloryを叩き潰して回っていると、ビルの上のエキウムが背後を見てハッとした顔をする。
「ダ〜ン」
眠たそうなとろりとした声が耳に響き、体すれすれで通過した大きな弾丸が、背後に迫っていた小型のGloryを沈黙させる。
背後のGloryを倒した弾丸が飛来した方向には、赤色の格闘機が狙撃銃を構えていた。
「ミラねぇだ、わー!」
「やっほエキウム、元気してた?」
ぶんぶんと手を振ってはしゃぎ倒すエキウムと地上に降りると、腕の中から飛び出して赤い格闘機に向かって飛ぶようにしてぴょんぴょんと向かっていく。
気付けば小型Gloryの姿は周囲に無く、バラバラに砕け散った夢の残骸が散乱していた。
大きな狙撃銃にはその銃身に相応しい大きなサプレッサーが装着されてはいるが、音もなく全ての敵を排除する技術があるパイロットが乗っている事で、より驚異的な隠密性で援護されていたことに気付く。
「本当に何なんだこの集団、Louenhideと何の縁もない様に思うけど。もしかしてガードマン?」
「半分正解だけど殆ど外れだな、私たちは
「耳が良いんですね、独り言だったのに」
「あんたは本当に何にも知らないんだな、スマートダストだよウーさんの作った。人間の目には見えない小さな機械がそこら中に置かれていて、完璧な監視システムを作り上げている。そんな事も知らずに生きているのも無理ないな、現代人はそんなのばかりだからな」
「そんなことないと思い……」
「そうなんだよ実際、あんたもGloryの存在を今日まで知らなかった訳だ。あんたの今日までの笑顔はな、Anfangの誰かの死の辻褄だ」
そんな関係ないところでの話を言われても困るが、それ以外の事を考えても、それは完全に当てはまってしまうものがひとつある。
それはこの世界が第三次世界大戦に突入する前の出来事で、日本の舞鶴が更地にされた事件。
憲法改正を訴えていた内閣総理大臣が改正に失敗し、国民が喜んでいた最中の出来事だった。
完全非核化に失敗した朝鮮半島によるミサイル攻撃により、イージス艦と地上の迎撃システムが撃ち漏らしたたった1つの核ミサイルが空で起爆し、軍港ごと街が消し飛んだ事件。
その原因は、憲法第九条と言う枷を着けられた皇御国の先制攻撃が不可能な状況にあった事によるもので、未然に防ぐ事が出来なかった政府は大きなバッシングを受けた。
その出来事があった後に、当時絶大な影響があった科学者のウラノスが指摘した事により、自衛隊から軍に名を変え、通常装備の強化は勿論、その他の兵器も揃えていった。
だが時代は既にそんな所に留まってはおらず、物理的で表面的な攻撃などではなく、隠密性の高いサイバーテロの時代に移り変わっていた。
政府はウラノスのサイバーテロ対策強化の忠告を無視し続けた結果、こうして信頼を地に落として小さな政府となってNode:1と言う大きな壁に閉じ籠った。
そこで何人も何人も死んで、皇御国の権利を取り戻す為にまた何人も何人も死んで、昔の傷を抉り返して国同士でいがみ合い、それを知らずに国民が生きる。
知らなくても良いそれを知ってしまったら、嫌でも意識させられてしまう。
「カ……ェせ!」
「うっ!」
深い思考に入り過ぎていたせいで迫り来るGloryに気付かず、無防備だった体に大きな触手が叩き付けられる。
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