第3話 青緑色の瞳

 今日も雨だ。梅雨なのだからしょうがないと言われても、私は人造人間アンドロイドなので水気には弱いのである。


 あまり乗り気ではないのだが、制服に腕を通し学校へ行く準備をしだした。


 どうしてあまり乗り気ではないかと言うと、先日友達の人造人間アンドロイドがヒトの乗る車にはねられ大破するところを目撃してしまったからである。


 確かに故障した箇所を取り換えるなり直すなりすれば人造人間アンドロイドは元通りになる。そのヒトが特にとがめられることはない。


 まして人造人間アンドロイドはヒトと共生するために造られている。替えの利く体を持っているのだから、ちょっと事故ったくらい許してくれよという主張は分からなくはない。というか、それを受け入れるように私たちは造られている。


 ではその逆はどうだろうか。人造人間アンドロイドに限らず、誰かがヒトを殺してしまうのである。


 この場合も単純だ。ヒトの体は替えが利かないので、唯一の尊重すべき肉体を壊したのだから重い罪に問われるべきだということだ。


 替えの利く人造人間アンドロイドの体よりも、替えの利かないヒトの体のほうが価値が高い。


 そんなことを昨日からずっと考えながら、私はポケットに入れた球状のパールを手に取る。白い球体に青緑色の水晶がはめられているような物質だ。重さはそれほど重くはない。


 これは昨日壊された人造人間アンドロイドの田中いろはの眼球だったものだ。居合わせたときについついポケットに入れてしまった。


 うへへ、これは高く売れそうですぜい、ということでくすねたわけではない。可愛い可愛いペロロロロ~ということでもない。


 私はいろはのエメラルドのような輝きを持つ瞳の色が好きだった。彼女のその青緑色の瞳が。そう言う意味では可愛い可愛いペロロロロ~なのかもしれない。ペロロロロ~とはしてはいないが。


 とにかく、連絡した回収業者が壊れたいろはを拾いに来たとき、なぜだかとっさにその場で拾った目玉のパーツを一つポケットに入れてしまった。もう片方の目玉があるし、型番が分かるから一つくすねても問題ない。私はそう思ったのだ。


 今、私の手元にはいろはの目玉だったパーツがある。青緑色の綺麗な瞳だ。私はそれを見るだけで、それがいろは自身であるとさえ感じられた。

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