扉の先1

私はいつも通りに扉を開け、新たな世界に旅立つ。

扉の先にはビルが立ち並び、人間で溢れかえっている。この世界は期待できそうだと心の中で少し喜んだ。ここのところ、私がよく知ってる人間の世界には巡り会えず、少し気落ちしていたのだ。

私は扉をくぐり、新しい世界に降り立った。そして、いつものように鞄から計器を取り出し、この世界の大気を調べる。

世界によっては大気が私の生存には適さない場合があり、私にとってこの計器は必要不可欠なのだ。少し時間が経過してから、計器はこの世界の大気は安全だということをディスプレイに表示した。

私は、それを確認してすぐに口元のマスクを取った。久しぶりの新鮮な空気を肺に送り込む。とても美味しい。

そんなことをしていると、誰かに背中を叩かれた。振り替えると、警察と思わしき中年の男性がこちらをきつく睨んでいた。

どうやら、防護服を纏い、よくわからない機械を触っていた私を誰かが通報したのだろう。そして、彼は私に身分の証明を求めてきた。しかし、この世界に来たばかりの私を証明できるものなのど何もない。私の元いた世界のもので証明すれば、一時的にはこの窮地から脱することができるだろうが、この世界の「私」に迷惑がかかってしまう。そして、私はどんな窮地にも私を救ってくれた作戦を実行した。その作戦は実にシンプルである。

脱兎の如く逃げるだけである。

私は人混みをかき分け彼から出来る限り逃げた。後ろからは怒声が聞こえ、私を誰かが追ってくる気配がしたが、振り返らずに必死ににげた。

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