第8話 大量取得
「ぶは! うぅ、くそ! またやられた!」
一瞬で切り替わる視界にも、後ろでレイモンドさんが声を掛けてくれているのにもさすがにもう慣れた。手に持った
「今度こそぶっとばす!」
大通りを一気に駆け抜けた先では、リイドの門番アルが疲れた顔で座り込んでいた。
「ちょ、ちょっと待てコチ! もういいだろう。流石に俺も疲れてきたし、いったん休憩にしようぜ。正直、疲れて加減ができなくなってきてるから神殿送りの回数も増えてきたしよ」
長杖を構えてやる気十分で戻った私に、アルは慌てて立ち上がると私に手のひらを向けて一気にまくしたてる。
「……」
言われて初めて気が付いたが、確かに随分長いこと戦っていた気がする。気力が充実していたのと、疲労感はあまり感じない世界だからやめどきを見失っていた。
「さすがに三日もぶっ続けで相手をさせられるとは思わなかった。夢幻人のタフさを舐めてたぜ。つうか、マジで少し休ませろ!」
「ち!」
「おい! 舌打ちすんな! おまえ最初は丁寧だったのにだんだんガラが悪くなってんぞ」
「そんなことありませんよ。何度も致命傷を与えられた相手に対する正当な対応です」
最初にああは言われたものの、さすがにそこまでしないだろうと思っていたのに、驚くほど何度も神殿送りにさせられた。ちょっとくらい乱暴な言葉を使っても文句を言われる筋合いはない。っていうか、いつの間にか三日も経っていたのか、そういえば夜間の戦闘指導もあったな。
三日間もログインしっぱなしというとちょっと不安になるが、【CCO】はログイン時に目覚まし設定を自分でしなかった場合、リアル時間で連続8時間以上の使用でアラームが鳴って強制ログアウトになる。私は設定せずにログインしたから、アラームが鳴らないうちは現実時間にはまだ余裕があるということになる。少なくともアラームが鳴るまでは時間については気にする必要はないだろう。
「だぁ! 悪かったよ。だけど、これで俺が強ぇってことはよく分かっただろ」
確かにそれに関しては認めざるを得ない。私のステータスがそれを証明している。
名前:コチ
種族:人間 〔Lv1〕
職業:見習い〔Lv1〕
副職:なし
称号:【命知らず】
記録:【10スキル最速取得者〔見習い〕】
HP:100
MP:100
STR:1
VIT:1
INT:1
MND:1
DEX:1
AGI:1
LUK:97
スキル
(武)
【体術1】【投擲術1】【剣術1】【盾術1】【槍術1】【大剣術1】【拳術1】【斧術1】【鞭術1】【短剣術1】【弓術1】【杖術1】【棒術1】【細剣術1】【槌術1】
(魔)
【瞑想1】【神聖魔法1】
(体)
【跳躍1】【疾走2】【暗視1】
(生)
【採取1】【採掘1】
(特)
【罠設置1】【罠解除1】【罠察知1】【死中活1】
メリアさんから貰った多種多様な武器を使って、昼夜問わずひたすらアルと戦っていたら、【暗視】に加えて武術系のスキルを軒並み取得した。これだけの武術系スキルが取得できたのは、アルが戦っている最中にいろいろ教えてくれたからだろう。
それは素直に感謝したいのだが、手加減がへたくそで基本的に大雑把なアルのせいで散々神殿送りにされて変な称号まで貰ってしまった。
【命知らず】
最大HPを越える一撃を短期間で何度も受けた者に送られる称号。
効果:
特殊スキル【
そりゃあ自称武芸百般の達人だと豪語するアルの一撃が〔見習い〕レベル1である私の最大HPより弱いなんてことはない。普通はそこで手加減とかをしてくれるものなのだが、残念ながらアルには手加減スキルはなかったらしい。
称号で取得した【死中活】スキルは『死中に活を求める』という言葉からきているらしい。効果は、残HPより強い攻撃に対してカウンターを合わせて成功すると、自らのダメージはキャンセルしたうえに、相手に与えるダメージに補正(極大)が付くスキルらしい。失敗すれば死、なるほど確かに命知らずなスキルだ。
「わかりました。じゃあ、今は見逃します。街での依頼がひと段落したらまた来ます」
「うげ、お前も大概しつこいな」
「こう見えても、負けず嫌いなもので」
「あぁ、もう! わかったよ。明日以降ならまたいつでも受けてやらあ」
仕方がないから付き合ってやるという雰囲気を出しつつも、アルの顔はちょっとにやけている。本当は私との模擬戦が楽しくて仕方がないのがバレバレだ。このツンデレさんめ。まあ、本来なら門番としてただ立っているだけの役目だったのに、こうして自由に暴れられるんだから、嬉しいのもわからなくはないけどね。
「言質は取りましたよ。それじゃあ、私は冒険者ギルドに行ってきます」
「さっさと行け、ギルドに登録するだけで何日かけてんだっつぅ話だ」
アルは私を追い払うように手をぱたぱた振っているが、そもそもこうなったのはいったい誰のせいか。そのへんをじっくりと説明してやりたいが、さすがにアルにばかり構っているわけにもいかない。
アルを無視して長杖をインベントリに入れると、街の中へと向かう。
「ぴぴゅい」
「お、また来てくれたのか? ありがとうな。でもひとまずここでの模擬戦は終わりだからここでは会えなくなっちゃうな。でもしばらく街にはいるからまた会いにきてくれよ」
私が話しかけているのは、街の入口にある看板の上にとまって、気持ちよさそうに囀っている赤い小鳥。この小鳥は、アルに神殿送りにされてからのダッシュ戻りを何度かしていたときに、いつの間にか看板の上で囀るようになっていた。いつもはダッシュで通り過ぎざまに挨拶をするくらいだったけど、逃げられたりしたことはないので、もしかしたらどこかで飼われている鳥かも知れない。
「ぴぴゅぴゅい」
「おっと、そんなこと言われても分からないか。じゃあ、またな」
可愛らしく首をかしげる小鳥に手を振って別れを告げる。さて、だいぶん寄り道したけど、いよいよ冒険者ギルドだ。
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