なぜ前に聞かなかったのか? 6

「割り当て表が?」

「ももちゃん、しゃあない。すぐ行こ」

 男子生徒が女子生徒をなだめる。すぐに指示が出された。

「一旦全員体育館に行くよ!」

 彼女の一声ですぐに卓球部は体育館のギャラリーの方へかけていった。

 研究部もすぐに卓球部について行った。ギャラリーへ出て、ステージの方向に進む。ステージ裏につながる扉を開けると、少し広い空間がある。以前、掃除で入った時にはここに卓球台が置いてあったので、ここに多目的ホールで練習するときの卓球台を置いておくのだろう。そこから鉄でできた階段をバタバタと音を立てながら降りていった。ピアノを脇を通り、バスケットボールを並べる棚と荷物が置いてあるのを横目にアリーナに出る。既にバスケ部とバレー部が集まっていたので、俺たちは素知らぬ顔して卓球部の後ろに着いた。

「全員集まりましたね」

 野島先生が前置きして話を始める。

「今日、体育館のゴミ箱に体育館の割り当て表が捨てられていました。今朝職員室の黒板から割り当て表が消えていたのでおそらく職員室の黒板にあったものでしょう。犯人捜しをするつもりはありません。が、勝手にみんなのものを捨てるという行為はいかがなものかと思います。今後このようなことがあれば体育館の部活について考え直さなければならなくなってきます。どの部もそのことを念頭に置いてくれぐれも同じことを繰り返さないように。

 そして本来の今日の割り当てですが、バスケ部がA面、バレー部がB面を使用する予定になっていました。今日はこの割り当てで行きたいと思います。以上」

 話が終わって、バスケ部とバレー部は練習に戻っていく。

「卓球部も早く戻ろう」

 赤いメガネの女子が黄色いTシャツの女子に声をかける。黄色いTシャツの女子は「戻るよ!」と声を張り上げた。すぐさま他の部員もついて行く。

 研究部も、卓球部が全員戻ったことを確認して、彼らについていった。

 バスケ部の人たちも、バレー部の人たちも、卓球部の方を見て何やらひそひそと話していたり、冷たい目線を送っていたりしている。本来の割り当てで体育館を使えなかったのは卓球部だ。彼らの心の声が嫌というほど聞こえた。

 割り当て表を捨てたのは卓球部かもね。

 きっとうちらの割り当て時間、取ろうとしたんだよ。

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