鬼ごっこ-3 プレイヤー恵美 犯行声明
学校で話していた時とはまるで違う。
ふざけながら、「私たち親友だよねー」とか言ってたのが嘘のようだった。
藍子も私も言葉や態度で取り繕う事も無く、これが本当の親友になれたような気がした。
『親友』って言葉を使っていた時よりも、そんな括りを付けない今の方がよっぽど親友だと思える。あの頃に信じていたものが何もかも変わっていくようだ。
恵美の事も、和志の事も。
藍子はスマホを取り出して、何かを確認している。
「新しいアプリはあるのかな……。あれ? 『読書感想文』が無くなってる」
「え? ホント?」
私も鞄からスマホを取り出した。
電源を入れてみると、『読書感想文』のアプリは無くなっていた。『各駅停車場所』のアプリはそのまま入っている。その他には『犯行声明』というアプリが入っていた。
「何だろう、これ……?」
タップして開いてみると、黒く塗りつぶされた人型と青い花と右に赤い時計が目に入った。
人の形をした黒い絵は四つあり、その横に青い花が並べられている。
一番上の人型の横には八つの青い花があり、上から二番目の人型の横には六つ、その下の二つの人型の横には五つあった。
「これって、もしかして、私たちの持ってる花……? 藍子は何本残ってるの?」
「んっと……」
藍子は鞄の中から花束を出し数えた。
「八本、かな。恵美は?」
「私は五本……。あんたたちの偽物にやられたのよ。責任感じない?」
嫌味を交えて睨む。
「それをそんな風に言われても……」
藍子はうろたえながら引きつった笑顔を浮かべている。こうやってからかってみると、やっぱり藍子は可愛いなって思う。
「冗談じゃないけど冗談よ。とりあえずこの状況をどうにかしないとね」
環境がころころと変わるこの世界は、慣れるという事が出来ない。いつも新しい場所、新しいルールがある。変わらないのは、プレイヤーと呼ばれる私たちだけ。
ふっと考えに耽っていると、藍子が何かに気付いた。
「あれ? ちょっと待って……。このアプリ……」
藍子はサラッとした髪を手串で整えながらスマホに視線を落とす。
「どうしたの?」
「これ、なんか時間がおかしくない?」
もう一度スマホの『犯行声明』のアプリを立ち上げる。
右端に映っている時計のカウント見てみる。すると、赤い時計には短針がなく、長身と秒針だけが戻っている。反時計回りをして、時間が減っていっている。
「怖っ。なにこれ!」
「今が九時五十八分……。で、この時計は、もう少しで一周するところ……、かな」
時間が戻っていく時計を見ていると、言葉が無くなっていた。何も言わず、時間の経過を見ていた。
もう少しで時刻は十時になり、赤い時計も頂上に戻ってくる。
心の中でカウントダウンをする。
時計が十を刻み、赤い時計も頂上に到達した瞬間、私と藍子の持っていた青い花が一輪溶けて消えた。
『時間経過。時間経過。イチ輪、没収』
「え……?」
赤い時計はまた時間を逆に刻んでいく。
人型の横の青い花も、一つ消えた。
頭の悪い私でも、この現象の意味はわかった。
このゲームでは、時間とともに花を失っていくという事を。
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