第7話 気付いた、胸

 真は次の日、学校に来ていた。

 昼休み、毎回のように必殺技その4を使って、屋上のカギを開ける。

「あ、真だ。」

朝輝あさき...」


 彼女は夜静朝輝やしず あさきひろと同じく、真の親友である。

「どうしたの?暗い顔してるけど」

 真が朝輝あさきの隣に腰掛けると。


「いつも話してる海守クンがさ...日常を失ってしまったんだ。」

「ふ~ん、詳しく教えて。」

 真は、あったことすべてと自分の考察を話した。


「まぁ分からないけどだいたい分かったよ。」

 朝輝が圧倒的矛盾を口にすると。

「まぁ真が本気を出したら、海守クンは余裕で守れると思う。私は真の好きなように生きてほしいと思う、真の人生だからさ。真が守りたいんだったら、守ればいんじゃない。私には真を止める権利はないから。」


「そうだね」


 沈黙が続く。




「真、止めてほしいんでしょ。」

 朝輝が沈黙を破る。

「え?」

「わかるよそれくらい。真の心情は、ぱっと見漢おとこだけど根は乙女おとめっていうのは私の中の鉄則だから。」

 朝輝が自慢げに真の心の内を暴く。

「...そう...かも..」

「でも、真みたいなのがやらないと、だれもやってくれない。というかできない。私にだって。」

「真がやらんでだれがやるの?」

 朝輝が真を押す。


 真はしばらく沈黙した後で、

「よしっ!」

 と立ち上がった。

「しばらく学校休むよ。そこらへんは朝輝、よろしくね。」

「おうよ」

 普通の高校生には承諾しがたいお願いを朝輝は聞き入れた。

 この高校名はそう。


 ...私立夜静高等学校だ。




 ────────────────────────


 真は部室から必要なものを取り出そうと、まだ生徒は掃除中で、だれもいないであろう部室に入ろうとした。

 しかしそこにはいつも通りR18の雑誌を平然と読む、駆辺態覇が居座っていた。

「おっ先輩、どうしたんすか?」

「態覇くんこそ、まだ掃除じゃないん?」

「さぼりっす、先輩もさぼりっすか?」

 いつも通り軽い口調で聞いてくる。


「うん、そうだよ。ちょっとしばらく休むから。」

 といいつつ真は物理部の棚をごそごそ漁りはじめる。


「休むって、なんでっすか?」

 態覇が立ち上がる。


「...ごめん。」

 真はそう言って、手に取った万能ナイフを隠すように態覇を通り過ぎようとする。


「滝環先輩も言ってたっすよ。命に関わることはやめなさいって」

 態覇が真を通すまいと前に出た。


 真は真剣な顔つきで態覇の眼を見る。

「先輩...」


 しばらく沈黙が続いた。



 すると真の心情を察したかのように

「仕方ないっすね、そんなに真剣な目されちゃあ止められないっすよ」

 引き下がる態覇。


「そのかわり、絶対帰ってきてくださいよ?」



「ごめん...ありがとう...」

 机と机の隙間、態覇の横を通り過ぎようとする真。





「まぁ、先輩たちには内緒にして...」

 態覇がそう言おうとして少し体勢を変えた。

 その瞬間、真の足が態覇にぶつかり、態覇が上になるような形で倒れる。




 ぷにゅ ふにっ


 態覇の両手に変に心地の良い感覚が、



 R18の雑誌をいくつも読んできた彼には分かった。



 ────これは、紛れもない。






 ──────女の子のおっ〇いだ。






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