第6話 神戦の予兆

 一人...ビル街の影にたたずむボロビルから出てくる...

「さて、物理部に帰りますか。」

 そう言って真は学校へ戻りはじめた。



 物理室の扉を開ける。

「あっ、おかえりですぅ部長(笑)さんっ」

「どこいってたんすか?先輩」

 一年たちが真を迎える。

「ごめん、ちょっと用事ができて。」

 真は苦笑いしながら答える。

「追いかけても無駄だと思ったから皆で待ったけど、なにかしてたわね?いつも留めてる髪留め、ついてないし。」

 美世みいせが鋭く問う。

「実は...」


「爆発が気になって、見に行ってた。」

 嘘はついていない。

「そんな危険なこと、どうして...それに髪留め外す必要ないでしょ?」

 さらに鋭く問う。

「髪留め?あぁそういえば...どっかで取れちゃったかな...あは...」

 真はくせが多い白髪をわしゃわしゃしながら、

 そう、あやふやに返すしかなかった。

「まぁ深堀りはしないわ、聞いてもどうにもできないでしょうし、」

 美世は諦めるように言う。

「でも、命に関わることはやめなさいよ?」

 母親かと思うくらいだが、心配してくれているのだ、ありがたいと思おうと、真は思った。

「わかってますよっ」

 笑顔で返事をした。

「私も部長(笑)が傷つくのはいやですぅ」

「俺も先輩の可愛いいのを拝めないのは悲しいです。」

 三觜と態覇はそろって心配する。

「ありがとうっ」


 そこに


 ガチャ


 扉を開いて誰かが入ってきた。

「あぁ〜だるい。お前ら、もう鍵締めっぞぉ〜」


「あっ、部長ぉ(本物)!」

 三觜が部長(本物)と呼ぶ人物が今日の物理部の終了を告げに来た。時刻はもう17:00であった。

「そうですねぇ、んじゃあ今日の部活はこれまでにしますか。おつかれさま〜」

 真がそうしめると、全員がおつかれさま〜と言って荷物を持って、部屋を出ていく。


 今日の物理部は活動を終えた。


 ────────────────────────



「もうすぐだな。」

 電車の窓から見える景色、青く輝く広大な水平線の中央に大きく輝く朱い半円。

 それが山の中に消えていく。

 二人は、終点から二つ前にある駅、課中かなかに向かっていた。

「彩海は...どこでどんな生活をしていたんだ?」

「私は...海広みひろ市でふつうの中学生だった。でもある日、この神気ちからにに目覚めた。」

 海守は そうか とうつむいた。

「でも、神気ちからに目覚めたときは、すごく嬉しかったの。大好きな海と、一緒になれた気がして、人目のいないとこで遊んでた...」

「そうか...それで...」

 海守は察した。

「奴らは自分たちを、新世軍ワールダーと呼んでいた、この神気ちからを用いて新しい世界を作るって。」


 二人の間に沈黙が続いた。


「俺は、何があっても彩海を守るよ。」

 沈黙を破るように海守が決意をささやく。

「うん。ありがとう」

 彩海は笑顔で答える。


課中かなか課中かなかです。」


 電車のアナウンス音声が響いた。


「ついたぞ」


 二人は電車を降り改札を抜けた。


「ここが、海守君のおばあちゃんの住んでるところ...」

 あたり一面、森や山。その中にいくつかある集落。

 その落ち着いた雰囲気の奥に二人は進んでゆく。

 駅からさほど遠くもない、畑が多く並ぶ道のわきに、一軒の平屋が建っていた。

 その奥の畑に人影が見える。

 人影がこちらに気付く。


「あれ..?海守かい...?」

「婆ちゃん...」

「どうしたんだい...?..誰か連れがいるみたいだし。まぁとりあえず上がりなさいな。」

 そう言われて、二人は平屋に上がる。

「ほら、そこに座りなさいな。」

 と言いつつ、お茶を持ってくる。

「それで、どうしたんだい?急に。」

 海守は、包み隠さず、ありのままを伝えた。



「そうかい、行く当てもなく、私の所に来たと。」

「全部信じてとは言わないけど、俺が言ったのは全てほんとのことなんだ。」

「...まぁ、その神気ちからとやらは私にゃよくわからないけど。」

「海守、あんたが自分でそうしたいって決めたことなんだろう?だったら私ゃ手助けするよ。」

 婆ちゃんが希望の言葉を口にすると。二人は目を合わせて安堵した。

 だが婆ちゃんはこう付け足す。

「でも、ただで泊めるわけにゃいかない。」


 二人はうつむく。


「家の家事やらなんやらをてつだってもらわなきゃ。」


「...はいっ!」

 二人は数秒目を合わせた後に喜んでそう、答える。




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