第5話 真の実力
「海守クン...」
真は目撃していた。
海守の日常の崩壊を。
「ゲホッ、ヴホッ」
海守が倒したローブの男が倒れこんでいる。
「大丈夫ですか?」
真はさっきの戦いは見ていないですよ、という雰囲気を醸し出しながら近寄る。
「貴様っ、ゲホッ、見ていたのっ、か?」
男は咳き込みながら問う。
「ん?なんの話ですか。それより大変です。今すぐ救急車を!」
真がそう心配する(ふりをする)と、
男は、苦しながらも走って逃げていった。
「あっ...」
真は男に気づかれ無いようにとしばらくあ然とするふりをするが、男が横道に入ると、すぐさま追い始めた。
気づかれないように息をひそめながら、しばらく追っていると、男は裏路地のとあるボロビルの裏口に入った。
「うーん、」
ビルには鍵がかかっていて入れない。
「どうしたものか」
真はそんなことを一人つぶやきながら、
前髪の左脇、首まで伸びた触角の根本に付けている髪留めを外し、
「僕の必殺技その4を使うか。」
と言って扉の鍵穴をいじり出す。
キィィ
男がボロビルの錆びた扉を開く、
「どうした、No.4、なぜ戻ってきた。No.21はどうした。」
白衣を被った男がローブの男に聞く。
「クソっ、No.21を追ってたら、民間人に足止めされた!そのまま民間人と一緒に逃げられてしまった、ゲホッ」
「民間人ごときに負けたのか」
「ただの民間人じゃない!あいつは
「なんだと、そんな事があるのか...」
白衣の男が興味深そうにする。
「早くっ、ゲホッ」
No.4と呼ばれていた男が膝をつきながら救助を求めるが、
「様子を見るに、その民間人の
「それくらい自分でどうにかしたまえ」
白衣の男は冷たかった。
「
「
白衣の男が厳しく聞く。
「あいつらの
「どんな
「あの民間人、水ノ神と言っていました。おそらく水を操れるのかと。」
「なんだと!」
白衣の男が驚嘆する
「それは大きな驚異だ、速やかに上に報告せねば」
白衣の男が電話をかけようとした。
その瞬間、
「うヴっ」
白衣の男が勢い良く殴られ、倒れた。
「誰だっ!」
No.4と呼ばれる男の視線が殴った者の視線に向く前に
ドゴっ ズドォ
No.4は状況を把握できない。
No.4の左頬に痛覚が走る。
「面白いねぇ、実に。」
その誰かが喋った。
「僕、真っていうその民間人の友達なんだけどさぁ」
「君たちは誰?」
二人に攻撃を加えたのは真だった。
白衣の男が立ち上がり、真の後ろのから勢い良く捕まえようとした。
「はぁ」
真がため息をついて、捕まえようとした白衣の男の腕を掴み、腰を落とすと、そのまま
「よっと」
といって白衣の男を背中にのせ、前にほうり投げる。
「やっぱり鍛えてないからそんなにきかないかぁ」
「でも変に鍛えると筋肉質な感じになっちゃうから嫌なんだよねぇ」
そんな事をつぶやきながら、横から勢い良く殴って来るNo.4の攻撃を避けつつ腕を掴み、
「よっと、かっこ二回目。」
と言いながらまたもやほうり投げる。
「君たち、勢いがいいのはいいけどバランスを自分から崩しちゃだめだよ」
と、敵なのにアドバイスをした。
二人が倒れている間に、おそらく束縛用であろうおいてあった縄を取ると、二人を縛り上げた。
「はい、これでよし。」
「うグッ、ウガァ」
No.4は口を縛られ、獣のように訴えかける。
「君たち当分そのままね、んじゃ帰りますかぁ、君たちから色々聞くのもいいけど、君たちの会話で大体わかったしね〜」
「まぁ君たちの失敗を挙げるとするなら、君、No.4、僕が追っ来てないか確認するのが良かったね。」
真はそのままビルを出ていった。
二人は苦笑いすることしかできなかった。
いや、正確には口を縛られているから苦笑いも出来ないまま、だた思った。
──こいつ強すぎじゃね。
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