frg-1-b 生活するモノリス : Beyond Watch

家にモノリスが出現してから1週間。

今のところ、木星の衛星に異変が起きたりはしていない。

何が変わったかというと、炊事・洗濯といった家事はモノリスが行っていることだ。

買い物まではいかないらしい。

「通販はダメか?」

「最安値ではない」

と妙に現実的な回答をしてきたので、買い物は自分が担当している。

フルワイヤレスイヤホン越しに中性的な合成音声が、

「これが一番安い。買う」

と告げる。

言われた通り、牛乳を買い物かごにおさめる。

この変わった買い物スタイルにも慣れてきたどころか、何となく楽しいと思うようになってきた。

必要な時にしか喋らない、喋ると合成音声でやや片言、微妙に軽そう、正体不明にもかかわらず。

餌付けされてしまっているのだろうか。

そんなことを考えながら会計を済ませ、店外に出る。

日は沈み、気温が下がり始めている。

街灯のつき始めた商店街を歩きながら、

「狙いはなんだ?」

「観察」

「何を」

「あなた」

即答だった。

「ずっと観察してきた」

モノリスは続ける。

「もっと知りたくなった」

「なんだ、それ」

「そのうち、わかる」

わかるようになるのだろうか、と考えながら家路を急ぐ。

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