frg-5 じんるいのなつやすみ

宇宙船を郊外に不時着させたのが5時間前。

船の自己診断モードが終わり、自動修復モードに切り替わったのが4時間前。

僕たちは通信機とサバイバルキットを担いで歩き始めたのが3時間前。

休憩をはさみつつ、歩いてわかったことは、この星の人類が夏休みをとったってことだ。

それも随分と長い休みを。

そうでなければ、都市が荒廃しているなんてありえない。

額の汗を拭ってからため息をついた。

水分は飲んだそばから汗になって流れ出ていく有様だ。

先を歩く少女は、まるで踊るかのように割れたアスファルトの上を進んでいく。

荷物を持っていないとか、人間の形をしているが中身は人間ではないとか、理由は思いつくけど、

「~♪」

聞こえてくる鼻声が一番の理由だろう。

「どこまでいくんだい?」

「アンテナが設置しやすい高い場所」

そういって少女が指さすのは、この都市で一番背の高い建物だ。

「あれのてっぺんまで登るの?」

「もちろん」

あっさりという声に僕は項垂れる。

外見は誰が見ても美少女だし、頭の回転もはやく、打たれ強さもある。

そんな少女だけど、僕にとっては少々、あたりが強いというか、無茶ぶりが多い。

それは付き合いの長さからくる何だろうか。

「ところで君さ」

声が聞こえて顔をあげる。

その瞬間を見計らったように少女はくるりと回って、

「わたしを見てどう思う?」

「楽しそう」

「うーん、30点」

「赤点かぁ」

「リトライできるよ」

先の問いは様子ではなく容姿だと気が付いて、

「綺麗だと思う。その、白いワンピース」

「この日のために選んだ甲斐があったよ」

てっきり趣味か何かで選んだものだと思っていた。

意外な答えにちょっとばかり僕は面を食らう。

「できれば、もう少し披露していたかったな」

寂しそうに笑った次の瞬間、彼女の両手には見たこともない銃器が握られている。

長さは彼女の腕の倍ぐらいはありそうだ。

息をのむ僕のほうに銃口を向けて、

「伏せて!」

その声に僕はとっさに伏せるとすぐに後ろで爆発音。

振り返ると、トラックぐらいの大きさの機械が火を噴きあげている。

「この星はどうやら、無人だが機械はいるらしい」

「夏休みをとるなら全員でとってほしいな」

「予定よりイベントの多い夏休みになりそうだよ、少年」

彼女はにっと笑った。

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