frg-4 星を見る人見守るヒト

空を見る。いくつもの星に交じり、強く光る星がある。

その輝く星は空を高速で横切っていく。

あれは星の海をわたる船なのだと言われている。

我々の先祖はあの船でこの星にまでやってきたのだとか。

しかし、星の海を渡る技術ははるか昔に失われてしまった。

地上から、この大気の海の底から星の海にあがる手段がないだけなのかもしれない。

そう考えた者は星の海にたどり着く手段を探し、ある者は日々の生活を営んでいる。

星の海にたどり着く手段があることをわたしは知っている。

なぜなら、彼らをこの地に招いた張本人なのだから。

厳密には人ではないのだけど、姿かたちは人間でその証拠に人間の中に交じってもばれていない。

わたしは優秀なシステムなので。

あと、人類のことは大好きですよ。

船の墜落で多くの装備が失われてしまったけれど、奇跡的に命は失われなかった。

乗組員は船を資材にしてこの街を作り上げた。

ただ、情報と知識のひきつぎはうまくできなかった。

三世代目の人たちにとって、あの星を渡る船も、わたしも伝説の存在になっている。

ただ、伝説で語られるわたしは随分とひどい神らしい。

人々を誑かして星の海を渡る船に乗せた神で、それを知った神がわたしと船ごとこの大地に落としたのだという。

実際はソフトランディングさせようと思ったけど、エンジントラブルでちょっとハードなコースで突入しただけで。

船の本体も脱出に使った小型艇も資材に転用してしまった。

もしかすると、いま、こうやって使っているフォークが小型艇かもしれない。

質感もそっくりだし。

そんな状態だから、星の海を渡る方法探しは困難を極めているらしい。

わたしはフルーツパフェの甘さに痺れながらそんなことを考える。

堅実なのは街の中心にある大外殻にエンジンを取り付けることだろう。

残念ながらエンジンは技術ごと失われているのでどうにもならない。

もしかすると、わたしが考えている方法とはまったく違う方法で人々は星の海を渡る方法を手にいれるかもしれない、とも思う。

そちらのほうが面白いとも。

それを待って、こうやって、生活をするのも悪くない。

空になったグラスにスプーンを落とすと、からん、と涼しい音がした。

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