街の光と美人 by海堂 尊
北都の高校を受験して難なく合格し、中学も卒業して3月12日、僕は北都に引っ越してきた。
高校の入学式は、4月10日。それまでに自分が住むマンションの周りだけでも見ておこうか。
としたいところだが……………………………
その前にこのとんでもない量の荷物をどうにかしないといけない。
そもそもこれが一人暮らしそれも初めてのだ。そんな人間が持ってくる量とは思えない。
「絶対に自分の要らないものも紛れ込ませてるな…」ため息をつきながらも段ボールを開けるとその中には説明するのも面倒になるほどにぎっしりと詰まっていた。…………………………あとで実家に返しておこう。
北斗に着いたのが夕方過ぎだったのでそろそろあたりは少し薄暗くなっているかと思い早めにコンビニでも行って食料を買いに行こうと立ち上がり財布を持ち部屋のドアを開ける。どうやらまだ暗くはなっていないらしい。
コンビニは歩いて5分もしないところにあった。弁当と飲み物だけ買い、外に出ると
なんというかコンビニに入る前より明るかった。
そりゃあ田舎に比べれば、夜だって明かりもあるだろうがそんなものじゃない。
いや、話には聞いていた。
北都の夜は明るいと。
しかしこれは………明るすぎる。
「ちょっと。」
初めての北都の光に少し感動していると
突然、後ろから声が聞こえた。
振り返るとそこには色白で肩くらいまでの明るい茶色の髪、そして少しつり目の目鼻立ちの整った女性、所謂美人がいた。
「そこにいられると他の人の邪魔になるんだけど。」
「あ、すいません。」避けるとその女性は僕を通り過ぎて光の街に消えていった。
「今の女の子、可愛かっただろ。」
しばらく女性が消えた方を見ていると、また後ろから声をかけられた。先程と違うのはその声の主が男ということだろう。
「学校でもあの人人気あるんだぜ?」
男は制服を着ているから学生だろう。金髪、顔は良い、10人に聞いたら9人はイケメンだと答えるだろうが僕の故郷では間違いなく頭の悪い部類に入る人だ。
「てか、お前北都に越して来たの?」
男は、唐突にそんなことを聞いてきた。
「なんで?」
「いや、大体の人って自分の家から近いコンビニ行くだろ?んで俺もその一人でよくこの時間に来るんだけどね。お前は見たことがなかったから。見た感じ学生だろ?」
「正解。今日引っ越してきたんだ。
ちなみに春から高校一年生。」
僕の言葉を聞いた男は嬉しそうに笑いながらこう言った。
「やっぱりかー!いや流石オレ!
てゆーか春から高校生ってことは俺と同い年か。ちなみにどこ?」
この男、初対面相手に随分とズカズカ来るな。まぁそっちの方が助かるけど。
「北都南高校。」
高校名を聞いた男は面白いものを見る目でこう言った。
「なら、さっきの人ともまた会えるかもな。」
「あの人も南高だから。」
北の都の黒手帳 花屋 ラスク @Hanaya4869
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