【終章(おわり)、の序章(はじまり)】

プロローグ

「──うふふふふ、あはははは」


 その時不意に耳朶を打った幼い少女の笑声によって、僕はおもむろに目を覚ます。


 夏の盛りの気候のためか、それとも今し方の夢のあまりのおぞましさのせいか、ベッドの上で上半身だけ起こした我が身を包む夜着パジャマは、寝汗でじっとりと濡れていた。


 この夏の間だけ限定で借りている、こぢんまりとした瀟洒なコテージの窓から外へと見やれば、煌々と輝く月夜のもと鏡のような湖の浅瀬で、純白のワンピースを身にまとった十二、三歳くらいの少女が、まさしく湖の精霊か真夏の妖精でもあるかのように、ただただ楽しげに舞い踊っていた。


 ──そう。僕と最愛の妹であるとの二人っきりの、『永遠なる夏休み』の世界の中で。

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