第三話 「うれしい、ちゅうか、なんかぬきい気持ちになったんや」
「まだこごさ移築される前の話だ。この家には六人家族が住んでだ。お祖母っちゃんと母っちゃんが米作り、父っちゃんは会社勤めをしてだ。三人の子供のうぢ、あんちゃんと姉っちゃんは家を出で大学さ通ってだがら、年の離れだ末っ子の健太君がいづも一人で留守番してだ」
「健太君はこの屋根裏部屋好ぎだった。昼間でもわざわざ暗えこごへ懐中電灯ば持って来で、その辺さ寝転がって本ば読んであったんだ」
「お母さんには、『目が悪うなるかぃ止めよっ!』っていつも怒られちょったんにな」
「十歳の頃だったがなぁ。毎日のように同じ本を持ってぎで、読んでだのが『ファイブレンジャー』っていう戦隊ヒーローものだった」
「こどもっぽぐでしょしいがら、こごでごっそり読んでだのがもしれねぁわね」
「わっきゃ上がら見でだはんで、ファイブレンジャーのごどもよぐ覚えでら。レッド、ブルー、グリーン、イエロー、ピンク、五人ヒーローさ変身すて力ば合わせで戦うんだ。健太君はむったど目ばキラキラさせで読んであったよ」
「こき来て、あんげ楽しそうに過ごしちょったんは今までで健太君だけや。それを見て、俺たちもなんちゅうか……そんぉ……うれしい、ちゅうか、なんかぬきい気持ちになったんや」
「それがら二十年ぐらい経って健太君一家引っ越してがら、しばらぐの間は空ぎえになってだの。その頃さ声出せるようになったのよ」
「せっかぐ声が出せるようになったのに、誰もこごへは来ねぁー。まだ健太君のような子ど仲良ぐなれだらいいな、なんて話をしてだら、この公園への移築が決まったってわげだ」
「ナルホド、よくワカリマシタ。それでワタシがイエローなのデスね。でも、ワタシはカリフォルニアうまれだし、ワカイし、イエローをヤルのはスジがチガウと。ワタシのやくめが
「……」
「ア、アレ? ワタシのアメリカンジョーク、おもしろくナイデスカ?」
「あのなぁ、おめさんは
「エッ、エッ、だってオナジでしょ」
「
「そうよ、大切な役目どごたがいでらあだんだんて、イエローなの。みんなで力どご合わせで、この屋根裏部屋どご守っていぎだいの」
「ウッ……ミナサン……」
「だーっ!なんでこった話で湿っぽぐなってらんだよ。肝心なごどは、どうやったっきゃ子どもだぢど仲良ぐなれるがで――」
こんな理由があったなんて。
イエローさんもみんなと一段と仲良くなれたみたいでよかったですね。
もう外も陽が落ちたので、今日は話もこれくらいにして。
おやすみなさい。
今日は日曜日。
朝から天気も良くて、公園にはたくさんの子どもたちや親子連れが遊びに来ていますよ。
あら、誰かが屋根裏部屋へ登ってくるようです。
*
「もっと上にあるの?」
「そうだよ。この先に屋根裏部屋へ上がるところがあるはずなんだけど……」
「おじいちゃん、これかな?」
「これこれ! この梯子だよ。懐かしいなぁ」
「ちょっとこわい」
「大丈夫だよ、お祖父ちゃんが下で支えていてあげるから、先に登ってごらん」
「……くらいよぉ」
「懐中電灯を持ってきてるから、今点けてあげるよ」
「ここが、おじいちゃんのいっていたヤネウラベヤー?」
「そうだよ。お祖父ちゃんのお祖母ちゃんのお家だったんだ。リョウ君のママも来たことがないんだぞ」
「なんかすごいね。ひみつきちみたい!」
「そうだろー? リョウ君なら気に入ってくれるんじゃないかと思ってたんだ」
「ねっころがってもいい?」
「いいよ。お祖父ちゃんもここで寝っ転がっていつも本を読んでいたんだ」
(オヴォッ)
「なんかおとがした……」
(カヴァ)
「なんだろうね?」
(エヴェー)(リヴィッ)
「ボクたちがきたから、ヤネウラベヤーよろこんでるみたい」
「……そうか……。うん、そうみたいだね。覚えていてくれて、ありがとう」
*
よかったですね、ヤネウラベヤーのみなさん。
みなさんの言葉、彼には伝わったみたいですよ。また遊びに来てくれそうですね。
※参考:「恋する方言変換」http://www.8toch.net/translate/
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