7

『!――――――――――!!――っ っ、』



 ――仮面が飛ぶ・・・・・



 長くウェーブのかかった茶髪が、ちゅうにばらける。



 崩れた壁の奥から伸びた水の一閃・・・・が、黒装束の仮面をえぐり取り、破壊した。



 離れよろけた黒装束へ肉薄にくはく、両手を奴の胸へ当て壁際へ押しやり、



「――凍の舞踏ペクエシス



壁に貼り付けるようにして、奴を凍結とうけつしばり付けた。



『ッ――!!! っ、っ!!』

「――最高のタイミングだよ、ボルテール兵士長。危うく殺されるとこだった」

「……っぷぁッッ、」



 勢いよく広がった水道管からの水たまりから、水精化すいせいかしていたペトラ・ボルテールが現れる。

 少々予定より遅れはしたが……事前に・・・話した通り、奇襲と拘束には無事成功した。



「私をこんな汚い水道管にギリギリまで閉じ込めやがったばちだよ。いくら水と仲がいいからといって……もう少しで溺死できしするところだ」

「その上死体は細い水道管の中で圧壊あっかい、ミンチになって発見される、か……確かに考えたくないな」

上水道じょうすいどうでなかったらお前も同じかんにブチ込んでやるところだったよ」

「軽口が叩けるくらいには余力を残して勝てたんだ。よしとしてくれ」

「……ああ。精霊化せいれいかし水道管伝いでお前らを追う、お前と敵の魔波を目印に不意打ちをしかける――秒で話した作戦にしては最上の結果だ」



 水にぬれた銀髪を耳にかけながら、ペトラのもう片方の手がうつむいた黒装束――――否、長いウェーブヘアの女のあごつかみ上げる。



「さてと。まさか女だったとはな、黒装束」

「…………」



 黒装束の――女の顔はくせの強いロングヘアで覆い隠され、全くうかがえない。

 たおやかに揺れる髪は、どこかシャノリアのような気品を感じさせる。



 そして戦闘はあの実力。

 武器防具の性能、初見では破りにくい独特な体術たいじゅつもあったとはいえ、恐らく俺では善戦できても勝てはしない。



 ただの刺客しかく――バジラノが送り込んできた手練てだれの一人に過ぎないのだろうか。



「アマセ君!」

「ケイ!」

「! リリスティア、ココウェル。無事だったか」

「うん。アマセ君が引き付けてくれたから…………捕まえたんだね。その人」



 いまだ煙の消え切らない方向からやってきたココウェルとリリスティアが合流する。

 ペトラは女のあごを強くつかみ上げていたが、やがて打ち捨てるようにその手を離した。



「……まあいい。口を割らせる方法などいくらでもある。……もう一人はディノバーツが捕らえる、あと一人もガイツが捕らえる……もう終わりだよ、バジラノ。貴様等も、貴様等の国も――」

「きゃああッッ!!!?」

『!!?』

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