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 急加速。



「ッッ!!!」



 慌てて物理障壁ぶつりしょうへきで防ぎ――片方の開いた手から射出された矢を魔法障壁で防御、障壁が割れると同時に二振ふたふりの所有属性武器エトス・ディミ錬成れんせいして合わせる――



「――」

「ッ! 、」



 ――暇など与えてくれない。



 黒装束が背後に魔弾の砲手バレットを展開し、自分諸共もろとも乱れ撃つ。

 爆風で動きを狂わされないよう、同じく魔弾の砲手バレットで弾丸を相殺そうさいする。

 明らかに魔術的な刻印こくいんが付けられた仮面の性能か、魔弾の砲手バレットの爆風の中でも的確にこちらの急所めがけて片手剣を見舞ってくる。



 だがそれは――俺の分野・・・・だ。



凍の舞踏ペクエシス

『ッ!』



 俺の足元からはしった凍結とうけつが黒装束の足元に及び、滑った奴がバランスを崩す。

 瞬転ラピドで詰め、下がる隙を与えない程の連撃を加える。

 怯んだ奴を更に――



 青い光。



「っ……!? う、ッ……!」



 頭の上をジェットパンチ・・・・・・・が抜ける。

 何とか避けきったその一瞬で、矢継ぎ早に次のジェットパンチ、ジェットキックが襲い来る。



 先も見た蛇のような動き。そしてまるでバーナーを小刻みに点火するような音をたてながら、敵はジェットを小出しして急加速の変則攻撃を繰り出し続けてくる。



 絡み付くような独特の動きはまるで中国拳法の一種。

 加えて急所を的確に狙ってくる、体術というより暗殺術とでも言うべき連撃。

 バジラノお抱えの暗殺者と言ったところか、気が付けばあっという間に防戦一方になってしまっている。



 だが――――十五秒・・・だ。



盾の砲手エスクドバレット

『ッ!?』



 不可視の弾丸に仮面を不意撃たれた黒装束がひるむ。

 すかさず盾の砲手エスクドバレットを連弾し、立て直す間を与えることなく――――氷剣ひょうけんでその体を袈裟懸けさがけに斬り裂いた。



「!」



 かたい手応え。黒装束が下がる。

 その装束にはわずかな裂傷がつき――その下に、ホログラムのような光をちらつかせる鎧が目に入った。

 見かけによらず防御も固い。



 顔は仮面、体は鎧と装束。



その重装備で、あれだけ動けるか。

 つくづくとんでもない手練れだ。

 斬るでなく突くべきだったか。アヤメの時のように――


            殺してしまうかもしれないのに?



「ッッ!!? づ、ァ゛……!!?」

『?』



 ――久しく感じなかった気がする目を切るような電撃が、脳を走る。

 畜生ちくしょう、こんな時に「痛みの呪い」の活性化が――!!



 矢が目の前。



「ッッッ!!!!?」



 紙一重かみひとえ避ける。いや、当たった。

 こめかみと耳に激痛。そして――――側頭に喰らった蹴りで体が吹き飛ぶ。

大して天井が高くもない廊下の入口で、体が完全に浮くほどの勢いでもって壁に激突。

呪いも吹き飛ぶほどの衝撃と揺れに立っていられなくなる。



「う、ァ――!!」

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