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「うわっ!?」

「グッッ――――!!?」

「な、ッ、」



 幸運にも機関銃の掃射そうしゃから逃れた者を狙うかのように、とんでもない低姿勢で忍者のごとはしるもう一人が正確に足のけんを断ち、機動力を失わせている。



 魔力やスタミナを考えても、瞬転ラピドだけではあんな視認も難しい動きをし続けられるはずがない。

 機関銃、もう一人の動き。つまりこれが――



「バジラノの軍事技術というやつか――――ッッ!?」

「きゃあッ!!?」



 顔の真横で柱を矢が貫く。

 ココウェルを抱え魔法障壁まほうしょうへきを展開、タイミングを見計らう間もなく飛び出し、とにかく一度安全を確保しようと――



 ――二発着弾。

 あっさりと障壁しょうへきは破られ、



「く――――そっ、」



 三発目を避け体勢を崩した俺の足元に迫る、もう一人の白き刃。

 それを、



『!!』



 刃を包むように現れた水が――――ブロンドの髪を弾ませるシャノリア・ディノバーツが、防ぐ。



「シャノリア――」

「キスキルさん!」

「はい! アマセ君、こっちへ!」



 シャノリアが黒装束くろしょうぞく流弾の砲手アクアバレット連弾れんだん、飛び退すさる黒装束を追撃し――



 ――黒装束が、消えた・・・



『!?』



 シャノリアが一瞬動きを止める。

 俺もリリスティアの障壁に守られながら、魔波感知で消えた黒装束を探すが――魔波を絶って移動しているのか、全く居場所を捕捉ほそくできない。

 光学迷彩こうがくめいさい?  何にせよ――



「何でもアリか、バジラノの奴らは……!」

「こっちに集中しろよ馬鹿ッ!!」

「アマセ君っ、ここに!」

「――……」



 乱れ飛ぶ矢と、何やらシャノリアが広範囲にき散らし始めた水から身を隠すようにして、俺とココウェル、リリスティアは上り階段の裏――いっとう分厚い壁の内側へと飛び込む。

 単発の矢が地面を砕く音が再び聞こえ――



 ――矢の数が減ってる?



「大丈夫だと思う。もう一人も兵士長が」

「! ペトラが?」



 壁際から中央を見る。

 ディルス・ティアルバーによって修復されたばかりだった城内は見るも無残に破壊され、倒れた甲冑かっちゅうや破れたはた瓦礫がれきに埋め尽くされ始めている。



 成程、矢は減った訳ではない。



 射手しゃしゅに迫るペトラ・ボルテールへ射撃が集中し、射線が限定されているだけなのだ。



 ペトラは軽やかな身のこなしと、つばの部分に大きな水色の宝玉がある魔装大剣まそうたいけんから生み出した水の竜巻などで矢を防ぎ回避し、あっという間に敵との距離を縮めていく。



「あの黒い服の仮面の人達……確かバルトビア兵士長が一気に三人を相手取ったって話だったよね」

「そうだな。同じ兵士長のペトラなら問題無いだろう」

「三人ってっ、もう一人は――」

「バジラノが動いているとガイツから連絡があったんだ。もう一人は恐らく商業区だ、ここにはいない」

「それで、どうするアマセ君。ここから……」

「ココウェル。さっき話した、王族だけの――」



 軽い音と共に。



 棒切れが、俺とリリスティア、ココウェルの横へと床を滑って転がってきた。



『!?』

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