第80話 牙剥く黒
1
「…………おや、じ?」
首を断たれた父に、マトヴェイが話しかける。
首を断たれた瞬間、それほどノジオスは生気に満ち満ちていて――そんな彼に、マリスタは目が釘付けになっていた。
しかし、それも一時。
視線が合っているのにも関わらず、その目はゆっくりとマリスタを
「――――――――――、」
「な――クソッ、ノジオスがッ」
「なんてこと――
同じく目の前で首を断たれた、
(――――ああ、そうか)
少女はあのとき、ただ胃の中身をぶちまける他、そのときの感情を表しようがなかった。
しかし今度は理解する。
意志を失ってもなお離れないノジオスの視線に、理解できてしまう。
(背負っちゃったんだ、今。私は)
その
自分がその視線を、胃が潰れるほどに重荷に感じていたことを。
(これから一生、この視線は――私を見つめ続けるんだ)
「――『父親を始末。このまま子も片付けます』」
仮面の下、
『……はい。ここからです、
『……動ける者は出来る限り、ヘヴンゼル
ガイツがやっとの思いで
次なる、そして真の敵との戦いに臨むために。
「ペトラ班からの応答が無かった。恐らく今まさに――バジラノが
◆ ◆
――床が砕ける。
壁が貫かれる。
不意撃たれた
「ハァッ、はぁっ、はぁっっっ……!!! あぶな、かった……!!」
俺を突き飛ばし、頭部を狙った
一本の矢にしては重すぎる連続の射出音は、もはや
狙いが一定でないのが幸いしている。
目の前で、あれだけ堅固なはずの
「けっ、けけけケイてめ馬鹿ッ!!! こんな石の柱なんていつまでももたねーんだからさっさと逃げ――」
「お前だけが知ってる隠れ場所は!?」
「えっ??」
「王族だけが入れる安全な場所とかだ、どこかにないのか!!」
その上
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