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「うっ……そだろ、」「なおった……もうなおったの?」「ティアルバーがやったのか?」「すげぇ……!」「すげえすげえ、すごいぞコレ!」「どんな魔術だよ、城どころか調度品まですっかり元通りだぞ!?」「大英雄の噴水まで……また見ることができるなんて」「こ、これがティアルバー家の当主の力……!!!」

「呵々。少し疲れましたな――これだけ大質量の錬成れんせいも久しぶりだ」

「――待ってください!」

「うん? どうなされましたかな、殿下」

「建材はどこから・・・・持ってきたのです!」

「呵々。妙なことを仰いますな」

「ごまかさないでください! 貴方が貴方の魔力だけで土属性魔法などで生み出した建材では、いくら建て直してもあなたの意志一つで城は再び半壊状態に戻ってしまう」

「仰る通りで」

「であれば、あなたが城を修復するために用いた建材は自然界に存在する材料・・・・・・・・・・のはず! 城を完全修復するほどの建材を、一体どこから削り取っ・・・・・・・・・・たのか・・・と聞いているのです!」

「呵々、成程成程。不肖ふしょうこのディルス理解しましたぞ。殿下でんかはいまだ――」

「まさかあなた――――まだ民の多く残る王都の地盤じばんを削り取って城を修復したのではないでしょうね!?」

「――まだこのティアルバーを信用できずにいらっしゃる、ということですな。ですがそれも当然のこと。心中お察し致します、殿下」

「答えなさいっ――」

「不敬が過ぎるぞ。父上」

「呵々、そうだな。久方の大量魔力消費にいささか興が乗り過ぎてしまったやもだ、どうかお許しを――ご安心ください、殿下。城下は、」

「!」



 ディルスの影から伸びでた黒き手が城門を開く。



 修復された石橋から見える城下は――




「リシディアの治めるこの地を、どうして私めが傷物にできましょうか」



――依然いぜん戦禍せんかを残してはいるものの――それまでと変わらない姿で、そこに存在していた。



 改めてココウェルが息をむ。



(王都は削られていない……だったらこの男は、城を修復する材料を一体どうしたというの?)

「闇はどこにでも存在します」

「……どういう意味です?」

「光など所詮しょせん仮初かりそめに世界を照らすもの。今この星に差す光でさえ太陽が生み出したに過ぎぬひとときのものでしかないのです。天地開闢てんちかいびゃくそのときから、世界はそも闇に覆われているのが当然」

「……簡潔に言いなさい、簡潔に」

呵々かか失敬しっけい。要するに城周辺の影から破壊されたヘヴンゼル城の残骸ざんがいを感知し、それを修復に用いただけでございますよ」

「な……つまりあなたは先の爆発で粉みじんに消し飛んだ建材の位置を、」

「どんな物質にも影があります。そして爆発で粉微塵こなみじんだと言うのであれば、逆にそれだけを探すことも出来る。容易たやすいことでございます」

(容易いワケないでしょう……!!!)

「さて。しかしいかに修復が完璧とはいえ、殿下でんかおっしゃる光の爆発が再度起きようものなら、この城は再び半壊のき目でございましょう。一度近くで感知していれば対策の立てようもあったかもしれませぬが。何か覚えていらっしゃいませんかな? 殿下」

「……すみません。わたしもただ、レヴェーネに守られて助かっただけで……ですが結局、誰がどんな魔術を使ったのかさえ分からずじまいです。ですが……これほどの力を持つ爆発を放てる者など、限られています」

「……お心当たりが?」

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