5
――人間の背を遥かに超えた、巨大な鉄の
両扉は壁面の各所に設置された白色の光を放つ透明な多面体の石に照らされ、扉の縁に沿う形でいくつもの小さな
扉中央には、人の体ほどもある太さの鎖を持つ巨大な錠。
その真ん中にある無色の石が――――緑色に発光している扉が、一つだけ。
「あそこです」
「待ってっ、」
ナイセストが足を止め、振り返る。
その切れ長の目に気後れしかけたココウェルだったが、それより更に大きな不安に押され、口を開く。
「……これほどまで厳重に閉じ込められている者を……本当に開放して大丈夫なのですか?」
「――殿下の疑心は
「そもそも、どうしてあなたがここのことを知っていたのですか?」
「……私はティアルバー家の者。城の構造については、古くから伝え聞いておりました。そして何より――私とその男は、
「……共に? 待ってください、確かあなたは……じゃあここに
「お察しの通りです。
「……レヴェーネ・キースも助かるのですね? それだけの治療の腕を持っているのですね?」
「……ええ。恐らくは王国全土で、彼ほど魔術師の人体構造に精通している人物はいません」
「魔術師の、構造……?」
「いずれにせよ、賭けるしかない状況かと」
「………………、そうですね。もとよりわたしに選択肢などありません。わたしの責任において、解放しましょう。その男を」
ココウェルが両扉に歩み寄り、扉の脇に
白衣を着たその人物は、ゆっくりと振り向いた。
「……
「…………」
思わずナイセストの背後に隠れそうになるココウェル。
ナイセストは前に進み
「あなたの力が必要だ。ディルス・ティアルバー」
あくまで静かなナイセストの言葉。
男は
その落ちくぼんだ目が、ココウェルをさらに脅えさせる。
ディルス・ティアルバー。
ナイセスト・ティアルバーの父であり、ティアルバー家の現当主であり――――今なお人々を苦しめる魔術、「痛みの呪い」の開発者と目される男。
(というか、そもそもここ……何なの?)
両扉の中、つまりディルス・ティアルバーの
そこは、何を間違っても「
白衣を着たディルスの背後には
別の壁際には寝心地の良さそうなベッドやコーヒーらしき液体の入ったポットまでが置かれている。
そして何より――――ディルス・ティアルバーは手足に
ココウェルがそれを見止め、目を見開く。
「ッティアルバー!! この男何かっ、」
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