4
「……囚人を?」
「案内します」
ナイセストが先導し、壊れた階段を、階段の失われた大穴を、ココウェルを支え歩き、飛び降りていく。
彼が向かうのは
そう解っていたからこそ、ココウェルには解せなかった。
「独房は……先の爆発でもう破壊されてしまったのでしょう? 囚人は残っているのですか? すべて逃げてしまったのでは――」
「失礼を」
「うひゃっ!?」
壊れた階段を、抱きかかえられて下り切り。
ココウェルは、初めて独房区へ降り立った。
「……っ」
「ご安心ください――既に
むせ返るような血の
へし折れひん曲がった独房の
破壊された独房から逃げ出そうとしたのであろう囚人が、床を埋め尽くすようにして転がされていた。
「これは……」
「罪人は誰一人逃がしておりません。ご安心ください」
「……殺したのですか?」
「イレギュラーを見逃すべき状況ではありませんので。――こちらへ」
ココウェルを下ろし、何の感傷もなく死体をまたいで先へ進むナイセスト。
複雑な気持ちを抱きながらも彼の言葉を
二人がたどり着いたのは、独房の立ち並ぶ通路の
「……ここが何だと?」
「ご存じですか。ヘヴンゼル城の地下深く、通常の独房とは一線を画した――より厳重な監視と
「……小耳にはさんだことがある程度です。まさかそれが?」
「壁の一部に魔法陣があるのにお気付きですか」
「え?」
目を細め、ココウェルが壁に近付く。
ココウェルの目線から少し高い位置に、さびとほこりにまみれた薄汚れに隠れるようにして――小さな小さな魔法陣が描かれていた。
「王族の魔力によってのみ、起動することができます」
「こんなのが……ッぅひぃっ!?!?」
手を当て、魔力を流し込むココウェル。
すると魔法陣は黒ずむように
ココウェルが通路をのぞき込む。
両脇にあるロウソクの灯りに照らされているだけの薄暗い階段は、行き先を見通せない程下へと続いていた。
「……なんで階段なのよ」
「抱えましょう」
「い、いいですっ! 一人で降ります」
「ではせめて。――では参りましょう」
ナイセストの闇の魔力が止血の済んだココウェルの足を覆い、靴のような形に練り込まれる。
闇のむずがゆさを感じながらも、ココウェルはナイセストの後に続いた。
「恐らく、この階段や空間そのものに魔術が仕込まれているのでしょう。
「そういう、ことですか……って、あれ。ティ、ティアルバーっ。前、なんだか階段が続いてないように見えますけど――ギャッ!?」
パシン、パシン、と。
弾けるような音をたて、謎の光の線が二人をスキャンするように通過し――ココウェルが指摘した階段の先の無い闇に新たなロウソクが灯り、更に下へ続く階段が現れた。
「……」
「こういう仕掛けのようですね。恐らく王族の魔力を定期的に検知しているのでしょう。急ぎましょう」
その後も階段を下り切るたびに、パシン、パシンと光が鳴っては階段が現れ続け――やがてロウソクの灯りとは違う、白色の強い光が見えてくる。
二人が並んで通るには
「……なにこれ」
「…………」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます