7.5



 嗚咽おえつと、ともに。

 ココウェルがナイセストの手を取り、身を乗り出して飛びつこうとし――



「――っ?」



 先んじて肩に触れたナイセストが、またココウェルをソファに寝かせた。



「傷にさわります。ひとまず休まれてください」

「っ……なによ、もう。少しくらい泣かせてよ」

「……何か?」

「何も言ってないっ。早く済ませなさい」

「――失礼致します」



 腹部と足に冷たい感覚。

 見るといくつもの傷口を包む小さな水泡すいほう

 それが治癒魔法であることは知っていた。



「――本当にありがとう。えっと――ティアルバー」

恐悦至極きょうえつしごくに存じます」

「……カタすぎ」



 王女の言葉に小さく一礼し、ナイセストが振り返る。



 赤い花弁かべんの中に、起動したまま転がっている記録石ディーチェが一つ。



 彼はそれを無表情で拾い上げ――再度映像を出力する。



『チッ』

『貴様……やはりティアルバーのッッ、フェゲンを一体どうしたッ!?』

「何をほうけている。リシディアの民よ・・・・・・・・

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