3



 ――黒き魔力が、白き光を食らう。



 ナイセスト・ティアルバーが、復活する。



「もう何をする必要もございません、殿下。ただそこに座して――どうか今しばらく耐え忍んでください。ここより後ろには、欠片の危害も加えさせません」

「はっ――カッコつけちまってよォ中二病くゥん!」「ナメまくったこと言ってんじゃねーぞ!」「一人でこの人数相手で、カケラノキガイモクワエサセマセンはイキりすぎだぜェ!」

「救いようのない馬鹿共が、」



 悪漢あっかん達を、



「『ティアルバー』が現大貴族の中でも別格であることさえ知らぬのか」



 し潰さんばかりの魔波が、襲う。



『ッッ!!!?!?』



 城を貫く空間がゆがみ視界がじれるほどの魔波。

 フェゲンのように構えなかった百にものぼろうかという悪漢達は残らず重圧にあてられ、目玉を小刻みに上下させ、口の端から泡を吹いて失禁しっきん、血管を体中で内出血させながら失神しっしんする。



 ナイセストの背後にいたココウェルにはわずかな魔波しか感じられず――倒れた悪漢らにただ茫然ぼうぜんとする。



「あと一人」



 静かな顔で、最強が老騎士を見た。



「――カ、カカ……これほどか……!」



 フェゲンの足元に、悪漢が落とした記録石ディーチェが転がる。

 ナイセストは一歩踏み出し――その両手に双剣の所有属性武器エトス・ディミ錬成れんせいする。



『なんだ……何なんだフェゲンオイッ!! どうなった、応答せんかフェゲンッッ!!』

「カカ、カカ……――ッカカカカカカカカカ! 願っても無い……願っても無いことだ! 我が仇敵きゅうてきの一角をここで――――」



 長剣がひらめき。



「討ち果たせるというのだからッ!」



 黒紅くろべに鎌剣コピシュがそれを受け止められず破壊された。



「!」

「ハァかかりおったかかりおったァァァァ!!!」



 ナイセストが退がる。



 所有属性武器エトス・ディミが破壊され長剣が肩口に届くまでの間に瞬転ラピドしたナイセストの体は紙一重かみひとえ袈裟斬けさぎられず、身に着けていたボロボロのTシャツだけが斬り裂かれ落ちる。



「カカカ! 惜しいのう、上半じょうはん真っ二つかと思うたが――」



 ナイセストの精悍せいかんな肉体と――――肩口から袈裟懸けさがけに残された、深い裂傷れっしょうあと露出ろしゅつした。



「――カカカカ! おっと先客・・がいたかね! カカカカカ……! 最強をうたうティアルバーの嫡男ちゃくなん傷痕きずあととは痛恨つうこんよな!」

所有属性武器エトス・ディミが破壊された……)

「ククカカカ……一体どんな強者つわものにつけられた勲章くんしょうだ?」

「(…成程)…今まで戦った、」



 ナイセストが――防御の構えを取っていたフェゲンの肩口を飛び越える。



「最も強い弱い男に」



 フェゲンが背後に振るった一撃を――――ナイセストが拾い上げた・・・・・悪漢のナイフ二本で受け止める。



「カカカ――そんな不慣れな武器でいつまでもつのかね?」

「……仕方ない」

「勝負は時の運よな――――そうれ。いくら不得手とて我が魔剣まけん容赦ようしゃせぬぞ!」

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