2
少女の
心臓を貫かれたような衝撃が、力無く開かれていた少女の目を
ココウェルはその少年に見覚えなど無い。
どんなに記憶を
誰も彼女を知らなかった。
(――彼は、本当にわたしの名を知っていた――――?)
「――敵を除きます」
「……え?」
「もし、私めが殿下の眼鏡に適うなら――――ここ一度だけ、この
「――――、」
背を向けたままそう告げる無礼。
それを詫びもしない更なる無礼。
しかし、それが状況をつぶさに読んだ――――油断ならぬ敵を前にする
(…………信じていいのか?)
明確な
自分を連れ出し、より酷いことをするつもりかもしれない。
リシディア王国のことなど、
もしかすると、国を乗っ取るにふさわしいのは我々だとすら考えているかもしれない。
ティアルバー家がこれまで行ってきた悪行を考えれば、彼らがリシディア家を救う道理など欠片もないようにしか思えない。
(――思えない、のに)
ココウェルが眼前の背中を見る。
拘束され
「ふぇ……フェゲンさん?」
「何やってんすか?
とっくに剣を構えている
緊張に疲れた悪漢の声がそれを裏付ける。
何より、ココウェルの心が訴える。
「彼の言葉に乗れ」と。
「彼に救いを求めろ」、と。
「――――っ、」
拘束具を解くには
投げられた剣が突き刺さりもはや
その
何よりそんなことをしても、更なる絶望に突き落とされるだけかもしれない。
今ここにある恐怖と絶望が、ココウェルの心を
しかし彼女は、
「――――ッッ、くふ、」
リシディア王国第二王女ココウェル・ミファ・リシディアは、立ち上がる。
『!!』
「ね――ねえフェゲンさんったら、」
『おい――おいフェゲン何してる、おい!』
『じいさん、ちょっと……ねえ!』
敵の声がする。
腹の傷がとんでもない熱を持つ。
引き
そんなものがどうでもよくなるほどに、希望が目から
「……お願い、」
すがり付くようにして少年の服を握る。
「どうか助けてください、」
少年を支えに立ち上がる。
「わたしを――――この国を、」
その背に泣き付くようにして、
「この城を――――っっ、」
背から手を回し、
「ッリシディアをこんなにしたあいつらを全部倒してッッ!!!」
注がれた王族の魔力が、
「――――
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