第77話 闇の亡霊
1
『な――――』
ノジオスが。
三姉妹が。
「……馬鹿な、」
「……あいつっっ、」
「……!!」
「――ウソ、」
「あれは――!!」
ペトラが。
ロハザーが。
マリスタが。
ヴィエルナが。
ケイが。
「……誰?」
ココウェルが。
そして、
「……カカカ……ッカカカカカカカカカカ!!!!」
頭の中心で白と黒に分かれた頭。
人間味を感じられない吊り上がった目。その表情。
青白くさえ見える足首には痛々しい赤いあざが円を作っており、長い間
ナイセスト・ティアルバー。
半年前までプレジア魔法魔術学校の支配者といっても過言でなかった「太陽」が、今くすみ切った状態でココウェル・ミファ・リシディアの前に立っていた。
「なんという幸運かな…………この
だが
(……ティアルバー……)
――プレジアに
――二十年前の戦争で、世界的規模の社会問題となった「悪魔の魔術」の開発者であることしか、知らない。
ココウェルの視界がかすみ。
再度、諦めの涙が伝う。
(――そんな者が、わたしを守るはずがない)
ココウェルが顔をうつむかせる。
風に乗ってただよってくる臭気からするに、
それが先の爆発で逃げたのだ。
恐らく、他の危険な囚人たちも。
(……なんだ。いよいよ国が終末を迎えることを知らせるだけの男か)
恐らくこの男はノジオスらと違って、いまだ自分に利用価値を見出しているだけだろう。
それを惜しんでノジオスらと対立しているだけだろう。
(わたしが誰か知らずとも、わたしが白旗をあげるところを見ていれば王族であろうことは見当がつく。それを見て
……否、とココウェルがつばを飲み込む。
この命が長らえる可能性があるなら、奴すら利用すべきだ。
少しでも、この国のために永らえることが出来るかもしれないのなら。
「――何でもします。そこな囚人、どうかわたしの命を――」
「傷に
背を向けたまま。
ナイセスト・ティアルバーが口を開く。
「それ以上口を開く必要はありません、ココウェル・ミファ・リシディア
「――――え?」
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