13
『見よ民衆よ。醜い醜いこの女の姿を』
声。
どこからか声が聞こえる。
『見えているか。あの汚らしい邪悪な笑みが。
……
いや。
つか。
「民草のことなど一顧だにしてない」?
は?
こんな社会のゴミみてーなマヌケ面ばかり手下に集めといて、お前達は国の、民のことを考えてるってのか? 私達より?
お前らに集められんのか?
志ある兵士達を。
馬鹿な王の元でも必死に働ける
『王都も見てみよ、このザマだ。どこもかしこも崩壊し、権威の象徴たるヘヴンゼル城さえも崩れ落ちていく……』
誇らしげに言うことかそれ。
王都に数十万を超える国民が住んでるの承知で言ってんのか。
だとしたら狂ってんぞ。
人の生活
お前らに作れんのか。これだけの街を。
二十年前の混乱にもかかわらず、ここまで治安の行き届いた国を。
確かに足並み揃わねぇ点では馬鹿ばっかだった。
でも個々人の志や仕事を見れば、それは決して――――
力を合わせることができてれば、こんなことには――――
『だが安心して見届けよ民衆よ。今日が時代の変わり目だ。絶望だらけの
――ああ。やっぱりダメだ。
悔しい。
悔しい悔しい。
悔しいよ。
あれだけの国が、こんな風に罵倒されて終わるなんて、やっぱり――――――
◆ ◆
「……イヤだ……!」
『あ?』
「――――」
ココウェルの最期の声が、その涙が――――無様でも絶望に最後まで
「いやだ……いやだよぉぉぉっっ!!!!! こんなっ…………っこんな風にこの国を終わらせたくないッッ!! 滅ぼしたくないよおおぉぉぉぉっっ!!!!!」
「行けお前ら。祭りの興を削がせるな」
「は、はい――おいお前らッ、」
『おう!』
「はーいエロ王女ちゃん、痛い目にあいたくなかったら白旗振ろうね~ェッ!!」
「あぅっ!?」
髪を引っ張られ、バルコニーの
悪漢らがよってたかってココウェルを蹴りたくり、またその心を折ろうとする。
しかし折れない。
ココウェルの最期の気持ちは、その程度で折れはしない。
「わたしはずっと見てきたもんっっ!!! 頑張ってる人たち、騎士たち、兵士達、文官たち、
『ココウェルッッッ!!!!!! ココウェルぅッッ!!!』
『王女ォォォッッッ!!……クソォォォ――――ッッ!!!』
張り裂けんばかりの訴えに応じたマリスタとロハザーの声が
しかし悪漢の至近距離での暴言、暴力にまみれた王女には届かない。
口を思い切り踏みつけた悪漢のヒールがココウェルの歯をへし折った。
それでも声は少女の
「助けてえええッッッ!!! 誰か、お願いよッッ!!! わたしを――リシディアを助けてッ!! 誰か……だれかああぁぁぁァァァァッッッ!!!!!」
「今更ガタガタと
「誰か、誰かぁっっ――――ッ!!?」
「あああああああぁぁぁああああッッッ!!!?」
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