12
〝お前は何もせずともよい、ココウェル〟
〝いいえ。殿下については、国王様より何も言い付けられておりません〟
〝よっぽど才に恵まれなかったのが
〝王族の恥だということで、人前に出す気は一切ないそうよ。それも
もう疲れた。
もう無理。死にたい。
無駄に長く苦しめられるくらいなら、わたしはさっさと死にたい。
誰からも期待されなかった。
誰からも
その理由を、誰もわたしに教えてくれなかった。
王からも、実の母からも無視されて――わたしは何不自由ない空間に、永遠に閉じ込められていた。
ちょっとした反抗のつもりだった。
わたしという人間を、少しだけ世に知らしめようと思っていた。
その為に、アヤメをつれて城を抜け出した。
〝王女様、王女様。この私の言葉が信じられないのですか?〟
とんだ道化。
〝長年付き従った私と、数日数時間言葉を交わしただけの下郎と。どちらの言葉を信じる《・・・・・・・・・・》
わたしは結局、唯一信じた一番身近な騎士にさえ、
弄ばれ、
〝
弄ばれ、
〝誤解です殿下。我々の下に情報が届きましたのもつい先ほどで、その
弄ばれ、
〝……誰?〟
弄ばれ、
〝ぬおおこわいこわい! この老いぼれは
弄ばれ、
〝話にならない、言葉遣いなんぞいちいち指摘してる場合でないのもお
弄ばれ、
〝馬鹿女がァ、もうちっとキョーヨウを身に付けやがれェ! オウジョサマってのはもっと高貴なドレス着てぴかっぴかしてる人のことさァ。おめーみてーな薄汚れた
弄ばれ、
〝どう考えても性的な使い道のがあるだろwwww〟
〝あの体で政治は無理w〟
弄ばれた。
〝気付け。お前には
……思い至る。
この国って、滅んで当然だったんじゃないか?
誰もが誰も信じていない。
誰もが自分の正義を実行するか、己の
きっと「魔女狩り」は、この国で起こるべくして起こったのだ。
殺し、犯し、奪い――そんな
ああ、解ってしまった。
ずっと前から滅ぶべきだったんだ、こんな汚い国は。
陽光がわたしを照らす。
心地よい風が吹く。
いっそ雨でも降ればもっと雰囲気も出るものだけど。
まあ、なんでもいいじゃないか。
掲げた白旗を気前よくはためかせてくれる。
新しい国家の誕生をとりあえず祝ってくれる。
にわかに巻き起こる祝賀の雰囲気に、国民はこれまでの痛みやわたしたちの末路などすぐに忘れる。
死ね。
全員死ね。
クズ共もこの国もこの世界も、みんなまとめて死んじまえ。
新国家に呪いあれ。
人々のに行く末に災いあれ。
そして世界が終わるその時に――――ほんの少しでもわたしの苦しみを思い知れ。
笑いがこみ上げる。
バルコニーの柵の前に立ち、ひきずってきた旗を両手で握る。
そら。
せめて
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