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「あんたがココウェルの何を知ってるってのよッ!!!? これだけ王都をメチャクチャにして人を殺してココウェルをさらし者にしてッ、さんざん人をバカにするけどあんた自身はどうなのよッッ!!? あんたの子どものマトヴェイ・フェイルゼインはココウェルの数万倍も数億倍もクズだったじゃないのよッ!!! お前だって王の器じゃないのは明白なんだよッッ!!!」

「解っていない――――まったく解っていないそれでもなお俺達の方・・・・・・・・・・がマシ・・・なのだ四大貴族のアルテアスの小娘ェェェッッ!!!」

「ッ――――!?」



 砂嵐。



 巻き起こる魔波の主は機神か、はたまた小男か。



「四十年もの長きに渡って我々を混迷の渦に閉じ込めておいてッ! 我々の力を奪っておいてッ! 一部の特権階級の者達の私腹を更に肥やすばかりを繰り返したッ!! 四十年だぞ――四十年だぞッッッ!!?!?!?!? どれだけ我らが貴様等にすがりチャンスを与えてきたと思うッ!!? その信用を・祈りを・どれだけ・どれだけにじられたと思うッ!!?」

「…………(知らない。そんなの……私もココウェルも知るはずないのに!!)」



 少女達は知らない。

 だが――――「知ったことか」で済もうはずがない。



「……マシなのだよ。たとえ我らがこの直後に倒れるような脆弱な国しか造れなかったとしても――今のままの国で在り続けるより、遥かにな」



「ツケを払うときが来たのだ。いい加減に」



 カラン、と。



 王女のかたわらに――――大きく白い、何かが投げられた。



「…………、」



 ココウェルがそれを認める。



 それは白旗しろはた



 国中に滅亡を知らせる、大きな大きな白旗。



「さあ掲げろ。自らの手で――――この忌まわしき国の息の根を止めろ。リシディアよ」




◆     ◆




白旗しろはたを眺めていた。



もう、自分がどうしてここにいるのかも分からない。

足から流れ過ぎた血は今でも止まってくれなくて、あぁ血は本当に命のもとなんだって実感だけが、わたしを現実につなぎとめている。



小さな血だまりに長い剣が映る。



わたしの片足の指を全部奪ったその剣が怖くて怖くて、わたしは慌てて行動を開始する。



敗戦。滅亡。白旗。王女。



そんな状況で何がやれるのかだけは、わたしにだって理解できた。



り傷がジクジクと痛む手で、はたを取る。

足の無くなった足で、立つ。



白旗を引きずり、陽光差し込むバルコニーへと歩いていく。



 もう、ダメだろう。



 泣くとか痛いとかではない。



 もうわたしは終わる。もうすぐ死ぬ。

 国を滅ぼした王女は、もう王女ではなくなる。

 ただの、公衆の面前で痴態ちたいをさらす亡国の元王女でしかなくなる。

 役目はただ一つ。過去の負債ふさいの一括清算。

 わたしの命は、リシディアの借金のカタに冥府めいふに差し押さえられる。



 笑える。道化過ぎる。わたしの命の意味って何だったんだ?

 もう、絶望する気さえどこかへ消えて失せてしまったけど。



 あごの下で、いまだかわかない涙が残っていて鬱陶うっとうしい。

 血の止まらない足は一向に痛みが引かず、いまだにわたしを苦しめてくる。



 いっそ出血大量で死ねれば。

瓦礫の崩落で死んでいれば、アヤメに殺されていれば、部屋に押し込められるだけの人生だと気付いたときに自殺していれば――こんな余計な屈辱くつじょくを受けずに済んだだろうに。



 何度も聞いた金属音が背後からわたしの鼓膜こまくらす。

 あの音が鳴るたびに、わたしは足の指を失い続けた。

 わたしは今、また何か足を落とされるようなヘマをしているんだろうか。

 もはや現実感も薄い状況で、正しい歩き方など思い出せない。



 ああいや、違う。

 きっとそれ・・もわたしの役目だ。

 白旗をはためかせた後――――わたしはこのジジイの剣で、リシディアの罪を一身に背負って斬首される。そういうシナリオだろう。

 民衆を焚き付けるにはもってこいのやり方だ。



 もういい。

 もうなんでもいい。

 どうでもいいから、さっさと殺せ。

 殺してくれ。

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