8

『それホント? ガセじゃないでしょうね』

「ずはは、フェゲンからの報告さ。ガセなもの――――かァッッ!!!!!」

「おんなのこあぶないっっ!!!」

「!?」



 我に返ったマリスタの眼前に――――飛来する鉄の拳ロケットパンチ



 少女を砕くに十分な威力を持ったそれが――――マリスタをかばった竜種りゅうしゅゼルティウィドに直撃する。



「うぅ――――――っっ!!!?」

「ど――ドラゴンッッ!!!!」



 地面を引き裂きその身を埋没まいぼつさせながらも、拳を受け切るゼルティウィド。

 そんな彼らを、



「もう終わりィ――――終わり終わりおわりなんだよ賊軍ぞくぐん共ォッッ!!!」



 もう片方の鉄の拳ロケットパンチが、貫いた。



「ぐが――――」

「キャアアアァァァァッッッ!!!?」



 轟音。

 吹き飛んだマリスタ達は商館ギルド瓦礫がれきに突っ込み、



「ゼルテ……っ、」

「ごめん サイファス――――もう げんかいだ。どうかしぬな、」

「ゼル――――」



 霧散むさん



 竜種ゼルティウィドが召喚契約しょうかんけいやくに従い――サイファスの魔力を使って在るべき場所へかえる。



 往復の魔力。

 崩落の中、大きな瓦礫の上で今度こそ――サイファス・エルジオは吐血とけつして気を失った。



「っ!? ドラゴンが消え……サイファス? サイファスッ! しっかりしてよ、ねえサイ――――――ッッ!!?」



 ゴ、とマリスタの額を瓦礫が打つ。

 不意の一撃にマリスタの額は避け、片目をおおごとく血液がれ流れる。



「くっ……ぁ、う……!!」



 落ちていく体。


 倒れたサイファスとビージ。


 応答の無いアルクス。


 姿の見えないイミアとアティラス。


 捕まったロハザー達。


 怪我けが人の救護で精一杯のペトラ班。


 来る気配の無い応援。


 全滅した城の兵。



 もういない。



 ココウェルを助けに行ける人など、王都のどこにも残っていない――――



「ココウェル…………ココウェルうううぅぅぅッッッ!!!!!!!!」

「ずわァ~~~~~~~~~ッハハハハハハハハハハハハァァァァァ!!!! 勝ちだ……我らの勝ちだァァァァァァ!!!!!」

『だーからうっさいっつってんでしょ』



 少女の絶叫が、感情に合わせ巻き起こった魔波まはが――――男の歓喜と崩落音ほうらくおんに飲まれて消える。



 消える。







 消える。




◆     ◆




「本当にいないのだな?」

「は、はい……残った部屋をしらみつぶしに探しましたが……王はいません。この城のどこにもです」

「ここにきて怠慢たいまんはよすのだぞ同志よォ。倉庫の床、庭の芝生の下……すべてくまなく調べたのだろうな?」

「し、調べました調べましたッ! だからそう、剣をふりかざすのはやめてくださいって……!」

「――ふむ」



 長剣を下げ、老騎士フェゲンは床に座り込んだココウェルと目を合わせる。



「――知らないッ! 知らない知らない知らないィッ、だからお願いやめて、もう足――足痛いの、お願い、ホントに知らないから」

「言え」

「だから知らないいいいいいいいぃぃぃいいいぃぃぃぃぃいいいぃいいいいいァァアァァァァァァァァア!!?????!?!?? やめてやめてお願い、なんでもするからもうわたしのゆび」

「言え」

「ァァァァああああああああああああなんでなんでなんでなんでなんでどうしてもうなんでしらないのにしらなァァァァァアアアアアアア?!?!ああゆびわたしわたしゆび、もうない、ゆびがないいぃ……アァ……ああああァ゛ァ……」

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