7

「動ける者は準備しろッッッ!!!!」



 救護テントの中にまで聞こえてくる兵士長、ペトラ・ボルテールの怒号。

 聞いたことが無い程に切羽詰まったその声が、最悪の状況であることを否応なく実感させてくる。



「王女が敵の手に落ちた可能性があるッッ!!! もう一刻の猶予ゆうよもないッ、急ぎ城に向かうッ!! 間に合わん者は後から続けッ!! 商業区に向かった者にも連絡を入れろッ!! 頼むから急いでくれッ!!」



 ……呪いが痛む。頭が回らない。



 王女が敵の手に落ちた。

 敵は王壁おうへきを破った。

 城は破壊された。

 であれば、あと残されているのは――敵がやることは――



「――――王と王女を殺して、国を滅亡させるだけ……?」



 どのくらいの猶予がある?

 どうすれば国は終わる?

 国の死とは何だ?

 滅亡とは具体的に何だ?

 奴らは――――敵はココウェルに、一体何をする?



くそ……ッ!」



 馬鹿が。

 何をするにせよ命を取られるのには違いない。

 だが城は最後のとりでだ、誰か味方がいるはずで――――ああ糞、先の爆発でどうなった? まさかココウェルはもう? いや早計そうけいだ、何にせよ、俺達には今何も情報が――――



 ――――ここから王都まで、どれだけかかる。



「ペトラッ!」

「かまってる暇はないぞアマセッ! ついてこれるなら準備しろ、間もなく出るぞ!」



 止まることなく通り過ぎていくペトラ。

 舌打ちしながら頭を振り、砕けた足の具合を確かめる。

 強く地に着いても痛みも違和感もない――どうやらえている。



 森から学園区までは十数分。

 敵との戦闘時間を差し引けば数分の距離きょりか。

 では王城までは?

 そうだ、瞬転ラピドを使えばもっと――――



 ――――それだけあれば、敵はココウェルを何回殺せる・・・・・



「くそ……糞ッ!!」



 ――もし、城の味方が全滅していたら。



 間に合わない。



 ここからじゃもう、間に合わない――――!!!




◆     ◆




「どうしてよ……どうしてお城が? 王壁おうへきはどうしたのよッ!」

「――そう……ずわはは。ずわははっははははははは! どうしても何もあるものか!」

『チビジジイ、うっさいんだけど』



 かなめの御声ネベンス・ポートを閉じ、ノジオスが記録石ディーチェ越しのカシュネの声など気にせず顔に手を当て高笑う。

 「ディオデラ」も同時に同じ動作をする。



「王壁は王族にしか解けぬモノ。これまで王が頑なに解かなかったことを?・ん??・考えると???――――答えなぞ決まっておろうが。俺ッ様の部隊の一つが王女を捕らえ、王壁を解除させたのよ……今すべては終わったのだァっ!!!」

「……そんな、こと……」

「ずわはは……しかしバンターめ、祝砲にしてはデカすぎるだろうが……俺ッ様の城が半壊だぞ! ずは――」

「そんなことあるわけないッッ!!」



〝クソッッ!!! クソッッッ!!!!! クソォッッッッ!!!!!!!〟



(そんなわけないッ……あれだけ、あんなにこの国がメチャクチャにされるのに怒ってたあいつが、自分から王壁を開けたりするわけがないッ! だって、だってそれをやっちゃったら、もう王様を守るものは――――)



「――そうだ、そうだわ。まだ残ってる――きっとお城の中に親衛隊とかいたはずっ!」

「それだ一番面白いのはッ、ずふはははははッ!! 城を守っていた副王宮魔術師めらは――――なんと先の爆発で民間人を守ってほぼ全滅とさッッ!!! ずぐぶふはははははははははははははッッッ!!!! そんなだから滅ぶのだこの国はァァァァァ!!!」

「…………・・・  ・・ ・   は?」

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