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 杖の先に光の刃を生み出し――フェゲンを貫いた。



 はずの刃が横滑る・・・



「!?」

「おォこわいこわい」



 フェゲンがわらう。

 レヴェーネの槍は火花を上げながらもフェゲンの白きよろいを貫かずれる。

 横薙よこなぎに大振られ迫るフェゲンの長剣を前にレヴェーネは――――消えた・・・



「! ほォっ」



 先に散らした転移の弾丸ラヴァスバレットが展開した魔法陣へ音もなく転移したレヴェーネが放った更なる一発の転移弾てんいだんがフェゲンを捉え陣を展開し、



 フェゲンはなんでもないように、その陣を長剣で破壊した。



「――なるほど。対魔力たいまりょく性能を付与された鎧に、破魔はまつるぎ……いや、『魔剣まけん』か?」

「カカカ。そんな大層なものではない。ちまたにあふれる模造品レプリカの一つよ。力は見ての通りだがな。楽しいのう、能力の探り合いなど久方ひさかたぶりだ」

「抜かせ。破城槌を転移させられればこちらの勝ちだ」

「と、わしの注意をとんま姫・・・かららそうとしているわけか」

「…………何故、お前ほどの頭脳を持つ者がこんな小火ボヤに手を貸す?」

「かかかげかか。貴様のような小童こわっぱに言っても詮無せんなきことよ――返すぞ!」

「!」

「きゃっ――」



 フェゲンがココウェルを投げる・・・

 つんのめるようにしてフェゲンの前に飛んだココウェルにレヴェーネは転移の弾丸ラヴァスバレットを放ち、魔法陣を出現させ、



 ココウェルの後ろ髪から剣が突きいでる。



「ッ!!」

「いぎぃいいいっっ!!」



 肩をわずかにで斬られ悲鳴を上げるココウェル。

 レヴェーネの背筋を悪寒が立ちのぼり彼はとっさに、



「お~~~~~ォおォ!!! 姫が消してしまう魔法陣まほうじんを壊さねば!!!」



 ココウェルを抱えて飛び退すさったが間に合わず――フェゲンはココウェルを中心に展開された転移の弾丸ラヴァスバレットの魔法陣と共に、ココウェルの背中を深・・・・・・・・・・々と斬り付けた・・・・・・・



「ァああああああああああッッッ!!!!!!」

「ココウェル殿下でんかッ!」



 鮮血が散る。魔法陣が散る。

 ぱっくり裂けたココウェルの背中から、とうとうと深紅の血がれ流れる。



「貴様ァァッッ……!」

わしぞくぞ? かたきなぶるは当然であろうがむしろッ!! 姫の傷はことごとく、こやつを姫といただく貴様等の責任」

「ッ……このっ、」

「そら。荷物が増えたのォどうするッ!」



 砂岩のタイルを蹴り、間髪かんぱつれずフェゲンが迫る。

 レヴェーネは治癒魔法を瞬時にココウェルへ施し――手にした杖を再び槍へと変化させ、老騎士の長剣を受け止めた。



「ほォ。貴様白兵はくへいもいけるクチか!」



 火花。剣光けんこう

 槍ごとレヴェーネを両断しようと風切り音を鳴らし迫る大振りを、魔術師まじゅつしは槍を棒きれのように振り回し一歩も引かずにいなし続ける。



「カカカ、できるできる!! よもや貴様のようなモヤシの優男やさおにここまでの立ち回りが出来るとは!」

「勉強熱心な――妹を教えていたものでね!」



 レヴェーネが一瞬の隙を突き、フェゲンの胸を蹴り飛ばす。

 フェゲンはわずかにうめき後ずさった。



(やはり、下手な魔法術まほうじゅつより白兵の方が勝機ありか。応援を呼んで王女の警護を――――)






――――おかしな魔波が吹き飛んできたのは、そのときだった。






『!!!?』

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