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「ほう?」



 ココウェルを引いて遅れてやってきたフェゲンが――魔術師達の中央、いっとう豪奢ごうしゃなローブを着込んだ色素の薄い髪色をした短髪の魔術師と対峙たいじする。

 老騎士はニカリと笑った。



「イミア・ルエリケが外に出ているとは聞いていたが。成程、ここを守るのは貴様の如き小童こわっぱだけか。王宮魔術師長、レヴェーネ・キース」

「……私を知っていてなおその態度か。かつてはさぞ名のある騎士だったのだろうな」

「アァそうさ。貴様もあのイミア・ルエリケの『副』を名乗るだけはあるようだな――今の転移てんいは貴様の魔術だろう? カカカ、見事なものよ。やっと骨折り甲斐がいのある相手に出会えたというものだ……!」



 長身である自身の上半身を超える刃を持つ長剣を振り回し、フェゲンがわらう。

 その背後に破城槌が準備された。



「『釣鐘ツリガネ』、『鮫肌さめはだ』、『三十路みそじ「みそじ言うなっつってんだろがイオリだッ!! 母音ボインしかあってなくてロクに面白くもねーって散々酷評こくひょうされてたろうがクソジジイがコラっ!」「うっせーぞミソジ。ジイさんが命令出そうとしてんだろが黙れ」「イチイチつっかかってくんなキモイボ野郎がッ!」「だからイボじゃねぇっつってんだろがゴラァ! やんのかクソババア」「やってやんよォ!」「フェゲン殿。バカは放っておいて命令を」

「……お前らは後ろの有象無象うぞうむぞう共をやれ。『副』はわしが一人で相手する」

「破城槌は?」

「あれはまたかの国・・・製だ、そうそう壊れはせん。転移には儂が気を付ける」

劣勢れっせいならば加勢しますぞ」

「誰に言うとるか『釣鐘』。カカ」

「承知。では――参りますか」



 背の高い褐色の『釣鐘』が構えると同時に、『鮫肌』と『庵』もいがみ合いを止め敵を見る。

 魔術師たちが小声で詠唱を始める中――『回剣かいけん』のフェゲンがニカリと笑った。



「さぁ最後の戦いよ――――門を破り王を探せッ! 我らでリシディアを滅亡せしめェん!!!」



 剣戟けんげきと、魔光まこうが――――乱れ飛ぶ。



 「釣鐘つりがね」「鮫肌さめはだ」「いおり」が先行し、応じた王宮魔術師が次々と四方八方へ散り――――フェゲンとレヴェーネの周囲に人はいなくなる。



「あ、あの。フェゲンさん、破城槌はじょうついは……」

「馬鹿ッ、今話しかけんなって」

「小男へ」

『はいっ!?』

「我らがかしらへ連絡をしておけ。間もなく国家は転覆てんぷくせり、とな」

「は――はいっ」

「させんさ。潰されてたまるか――お前達如きぞくに、国一つ潰されてたまるものか!」

「潰れるわい。それだけこの国が弱り切っておることさえ理解できんか小童こわっぱッ!」



 ふく王宮おうきゅう魔術師長まじゅつしちょう、レヴェーネ・キースの背後に――渦巻く闇のような弾丸が多数装填そうてんされる。



転移の弾丸ラヴァスバレット

「!?」



 弾丸を飛び散らせるレヴェーネ。

 己に飛来した弾丸を長剣で切り裂くフェゲン。

 他の数発が悪漢あっかん、破城槌にそれぞれ着弾し――――対象を中心に魔法陣まほうじんが展開された。



「うっ――お、なんだこれっ、」

「フェゲンさんッ、破城槌に――」

「ほほう!」



 喜声きせいと共に、フェゲンが長剣を大きく振り――魔法陣を破壊・・・・・・



これ・・で飛んできたワケか先程は、カカ――――転移魔法陣てんいまほうじんを出現させる弾丸とは恐れ入る」

「ああ、そして」

「!」



 そうしている内に、フェゲンの背後にレヴェーネが肉薄にくはく

 光と共に現れた杖を手に、



「これで終わりだ」

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