12

三叉リュアっ、」



 ノジオスが拡大した映像に。



 血だまりの中で倒れるロハザーに、マリスタは動きを完全に止めた。



「――え? なに、それ」

「貴様の仲間をォ、俺ッ様の部下が完全撃破したってことだよォォォォ!!! 誰もお前ら等助けにこれなァァァいッ!!!」



 

 ロハザーから映像がずれ、捕らえられたヴィエルナ以下他のメンバーも映る。



 上級魔法が、少女の手の中でゆっくりと消滅していく。



「……そん、なの。ニセモノ、」

「だそうだぞ小娘ェ? その若造共がホントに敵なのか証明できるのかアァ?」

『は? なんだったら声聞かせてあげようか?』

『声といってもヒメイですけどね、あねさま』

『あん? んだよ姉貴、もう一つくれー内臓ないぞう潰すか?』

『だめ。臓器は高く売れるんだから』

「そうだよなァア~傷つけるわけにイカンよなァァアアア!!!」



 「獲物えもの」の話をする少女達。

 勝ち誇ったようなノジオスの声。



 何もしていないのに荒くなっていくマリスタの、呼吸。



(……兵士長)



 奮い立たせたはずの魔力が体の中で減退し、魔素とかえっていく。



 それは彼女が初めて感じる、気絶することなく戦いが終わっていく感覚。



(応援は……救護班は、本当に来るんですか?)



 これが、敗――なのだと、少女は――――



「違うッ……!! 違うっ!」

「そうだ……マリスタっ」

「!」



 かたわらで。

 


 竜種ゼルティウィドと共に地に伏せっていたサイファス・エルジオがよろよろと、「彼」に手をついて立ち上がる。



「サ――サイファスっ、あんたは」

「大丈夫だ。お前以上に休んでる――――ゼルテもまだ消えてない・・・・・・・。さっきまで倒れてた俺が言えたことじゃないが……最後まで諦めるな。リシディアはまだ死んでない、救護班だって来る――俺達にできることはまだ必ずある」

「ではそれは何かな?」



 数メートル先に。



 倒れた義勇兵ぎゆうへいやアルクスが散乱した土だけの空間に、「ディオデラ」だけが立っている。



「この俺ッ様を……機神を相手に。満身創痍まんしんそういの小娘一人と召喚術師しょうかんじゅつし一人でどう時間を稼ごうというのだ?」

「……おれのこと、わすれてるぞ」



 サイファスの横で緑の巨体が身動ぎし、砂粒をこぼしながら同じく立ち上がる。

 体を覆う大きなうろこを小さく明滅させながら、ゼルティウィドの大きな瞳がノジオスを見た。

 マリスタが息を吸い込む。



「……往生際が悪い、とは貴様等のことだな。よもや……」

「ありがとう、みんな――大丈夫だよ。私は諦めない。絶対にリシディアを……ココウェルを「これ以上悪い状況にはならないとでも思っているのか? 俺ッ様の同志達は他にもいるというのに」



 その時だった。



 鼓膜こまく滅多めったつかのような巨大な破砕音はさいおんが、王都すべての人間にとどろいたのは。



『ッ!!?』



 マリスタ、サイファス、ノジオスでさえもその音に目を見開き、地震によろめきそして、本能的に発生源そちらを見る。



 音のみなもとは。

 視界がとらえた建物は。



「‥‥‥‥は ?」



 王都を外縁がいえんの森からまっすぐ貫通かんつうした巨大な巨大な光の玉により、直撃した王城が半壊する光景。



「なん、」



 王城が 半壊する 光景












 ――――大木さえ吹き飛ばす突風が、マリスタ達を遥か遠くの瓦礫がれきへ吹き飛ばし叩きつける。

 ノジオスでさえも機体のまま地面を転がり、地面に両手を突き刺して何とか耐える。



 遅れてやって来た王城破壊の爆風がにわかに土ぼこりを巻き上げ、黄土おうどきりが王都全体を包み込む。



「ご、ほ……」



 たっぷりの砂を髪から払い落としながら、マリスタが力無く顔を上げた先には。



「――……なんで――――――――何が起きてんのよ一体ッッッ!!!!!!!!!」



 もはや太古の遺跡のように荒廃こうはいしきったように感じる、城下町の向こうに。



 ほぼ左半分すべての建物を食い破られ、かたむいて崩れ落ちていく、ヘヴンゼル城の姿があった。

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