11

「ガァッ――――ッ!!!」



 両肩から射出された二つの土属性上級魔法に、巨大な破裂音を伴った竜種・ゼルティウィドの風の弾丸が炸裂さくれつ

両者は大きく吹き飛んだ。



「きゃあアァッ!!」

「がグ……!!!」

「ぬぅぅうっっ!」



 ゼルティウィドが倒れる。



 「ディオデラ」は着地した。



『発見したッ!! 見つけたぞッ、背面上部、人体で言ううなじ・・・付近に埋め込まれた魔石がギャッ!?!?』

「うるさあァァぁァァぁあいッッッ!!!!」



体を回転させ、飛ばした両手で無茶苦茶に辺りを蹂躙じゅうりんする「ディオデラ」。

周囲の瓦礫がれきは一つ残らず吹き飛び、商業区に落ち――――そして静かになる。



 砂嵐しか、聞こえない。



「…………だ。だれか?』



 顔をうつむかせへたり込んだまま、マリスタがかなめの御声ネベンス・ポートを開く。



『――――…………』



 答えない。



 誰も答えない。



(…………負けて、しまう?)



 ――――少女の背に。



 「敗北」の二文字が、急速に襲いかかる。



「――負けない。わたしたちはけないッッ!!」



 砂塵さじんへ向け、敵へ向け言葉が口をく。



「たとえっ、たとえ私達がやられたとしてもっ……私達には仲間がいる! 今もここやお城を目指して進んでくれている仲間がいるッ!!」

「……願掛けか何かか? やたらやかましくなりおって」

「違う、事実よ! 私達は敗けてない負けない、これだけの戦火なんだもの――きっと誰かがすぐにも駆け付け――」

『おーいチビおっさん、聞こえてるー? おーい』

「!?」

「ん?」



 ノジオスが懐から角ばった記録石ディーチェを取り出し、起動する。

 投射された画面に映ったのは、髪をてきとうな三つ編みに結った小さな女の子。



『うわ、周り茶色ちゃいろじゃん。何があったの?』

「き、貴様……なぜこの記録石ディーチェを持っている、こいつは幹部連中にしか――――……『あの男』か」

『そ、『あの男』が『いらんからやる』ってさ。そんなことどうでもいいから確認したいんだけど。私達の報告、ちゃんと届いてんの?』

「報告?」

『……つかあんた……』



 ノジオスの声音に疲労の色を聞いて取った少女だったが、指摘する無駄を省いて続ける。



『あー届いてないのか。あながち嘘でも無かったってことね、あいつの言ってたことは……』

「大人ごっこはヨソでやっていろ小娘共ッ! 今忙しいのが――」

「馬鹿にすんなっつってんでしょチビ。『敵捕まえたら金出す』っつってたわよね、あんた――――お金、後でもらいに行くから用意してなさいよ」

「なに――――」



 画面をのぞき込んだノジオスが固まる。

 小声で上級魔法じょうきゅうまほう詠唱えいしょうし切ったマリスタが、狙い定めて打ち込もうと腕を上げたと同時に――彼はこれまでにない歓喜の笑い声をあげた。



「!?」

「ずふぅわははは、ははは、はーっっハハハハハハハァ!!!――おぉいアルテアスの小娘ェ!」

「何言ったって無駄よ海神のヴァダレイ――」

「お前の仲間ァ。死にかけてるぞぉォォ!!」

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