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「わたしが――わたしがいないともう、リシディアは潰れちゃうんだから。わたしがいなきゃ、だめなんだから。そう、みんなそう、」



 自らに言い聞かせるようにして、歩く。



「そう、そうよ――あは。わたしは絶対に守らなきゃいけない存在。誰も見すてるはずない、みんなわたしが必要なはず。わたしがいなきゃだめ、だめ、ダメなんだ。だからわたしは捨てられない、だからわたしは求められる、わたしはこんなところで死なない――――死にたくないッッ……!!!!」



 曲がり角を、曲がる。



 そこに、男がいた。



「――――ぁ…………た、」



 自分を覆う影に一瞬思考が停止する。

 その風体ふうていと理性の少ない目を一目見ただけで、その者が自分の味方でないことは明らかだった。

こぼれそうになった悲鳴を飲み込み、跳ね上がる心臓を押さえつけて逃げようときびすを返す。



(助かる助かるわたしは助かる、だから逃げなきゃ逃げなきゃにげ)

「オイオイオイオイオイとんでもねェエロさの娼婦しょうふがまだ逃げ遅れてやがった!!!!!!」

「―――――――――――― 、 は?」



 その言葉の衝撃は。



一瞬の放心は、男に押し倒されるには十分すぎる時間。



 状況を飲み込めないココウェルの前で、男はためらいもなく――――彼女の服を破り捨てた。



「――――ぁ、ぁ――――――ぁあああああああぁぁッッッ!!!!?」

「オイオイ、暴れるなって――俺達はこの国を立て直そうって言うエイユウなんだぜェ!? どうぞ疲れをいやしてくださいってまた開くのが娼婦テメェらの仕事ってモンだろうが!! イヒィヘヘこりゃ上モノだ、両手と顔うずめてもまだこぼれちまいそうだァハハァッ!!」

「ちがうちがうちがうちがうっっ!!! わたし――そうわたしは王女だっ!! 王女ココウェル第二王女ココウェルミファリシディアだ見ろ見ろお願いだからわたしを見てッッ!! 見なさいってッッ!!!」

「馬鹿女がァ、もうちっとキョーヨウを身に付けやがれェ! オウジョサマってのはもっと高貴なドレス着てぴかっぴかしてる人のことさァ。おめーみてーな薄汚れた痴女ちじょとは格がげぇんだよォォッ」

「……なに……言ってんだよ……わたしはァァッッッ!!」

「うるっせェなもう黙ってろッッ!!!」



 腫れぼったい拳が、ココウェルの頬を無造作むぞうさに打つ。

 打つ。打つ。打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ「痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいぃィィィッッッ!! やめ゜てめてやめてぇェェッッ!!!」

「ハァ、いいから後ろ向けオラ……今ブチこんでやるからよォぉォ……!! ンぁ~すっっげェ揉み心地だれそうだハァ」



 あごが瓦礫がれきこすり、かすれた血の跡を残す。

 背後からはだけた胸を揉みしだかれながら、首筋に酒臭い息を浴びながら、獣のように下半身をこすり付けてくる悪漢におおかぶさられる。

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