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 ガイツの脳裏のうりをかすめる、泣きながら彼の胸倉をつかみ上げようとしたマリスタの涙。



 ガイツの脳裏に残るその姿が――――今、彼の口を開かせた。



「……その作戦、一般参加者は知っているのか?」

「知りません。相手には油断ならない騎士が付いています。陽動ようどうを無自覚に行ってもらった方が、誰が自分たちを狙うかわからず混乱させられますし、ご存じの通り敵は私達の命まで奪えないようです。敵は逃げる一方かと」

「お前達の情報が正しければ、相手は一国の姫を任される騎士共だぞ。有事の際にはなりふり構わず、一般人を襲う可能性は考えたのか」

「ええ。ですから一般参加者は私達風紀委員ふうきいいん、そして義勇兵ぎゆうへいコースの中でも腕利うできき、ベージュローブ以上の者達に警備させています。敵は三人一組と聞いておりますので、四人一組を十数組ほど、第二層に集中させています」

「――義勇兵コースの者達を? 待て、それでは」

「はい。彼らも皆、知っています。王女がプレジア内にやってきていることを」

「おいちょっと待て!」「重大な情報をそんなッ」

「ケイ・アマセはその情報をかたくなに秘めていたはずだろう。だからこそフェイリー・レットラッシュも奴を――」

「それではダメだと判断しました」

「――何?」

「個人や少数の才能に頼るばかりでは、ナイセスト・ティアルバーと風紀委員会が台頭たいとうしていた頃と変わらない。それではダメなんだと、私達は気付かされたんです。先生方に、あなた達に、そしてマリスタ・アルテアスに」

「…………アルテアス」

「だから仲間を増やしました。他に質問は?」

「お、おい兵士長」「いつまでこんな問答――」

「……逃げられる可能性は? 敵は携帯けいたい転移てんい魔石ませき使っているのだろう」

携転石けいてんせきの効果範囲を包み込むように、先生方に感知結界をはってもらっています。感知次第、ベージュローブ以上が追手をかける準備があります」

「……教師も知っているのだな」

「はい。最初はディノバーツ先生、ザードチップ先生。そこから全員に協力していただいています」

「では出入り口は?」

「そこも教師と義勇兵コースの者に守らせています」

「敵の頭目はあの黒い騎士なのか? 実力は未知数だろう、そんな中王女をどう確保するつもりだ?」

「プレジアの最高戦力を投入します。一般参加者に攻撃させないのはそのためです」

「最高戦力――」



 ガイツがギリートを一瞥いちべつする。

 呑気のんきに手をひらひらとさせてみせたギリートの腰には、確かに玩具おもちゃでない真剣、「イグネア」と呼ばれた魔装まそうけんげられていた。



「……確かに、その男ならば役目を果たすだろう」

「信頼していただけて光栄です。――それで? 皆さんはここへ、何をしに来られたんでしたっけ」



 苦虫をつぶしたような顔でギリートを、そしてガイツを見るアルクスら。

 ガイツはその視線をあくまで受け止め、その目でリアを見た。



「…………。変わらないではないか」

「え?」

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