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 アドリーはどよめく学生達の前に出、藍色あいいろのローブをまとった巨躯きょくの男の前に出る。



「大丈夫ですか、セイカードさん」

「は、はい。あの、先生」

「ええ。予定通り・・・・お願いします」

「どういうことだ」

「さてと、兵士長さん。それはこちらの台詞セリフですよ。学生に乱暴を働きながら押しってきたりして、何の冗談です」

「あの『王女』とやらがケイ・アマセの『隠し事』なのか? あれは本当にリシディアの王族、ココウェル・ミファ・リシディアなのか」

「答える義務も義理も無いように思います、またハッキリとした答えは知りません。よってお答えしかねます」

「俺は学長からこの件を任されている!!」

「私達も学長からの許可の下イベントを行っているのです。あなた方にも通達は行っているはずです」

「王女の存在など聞いていない!!」

「何をおっしゃっているのやら。お渡しした企画案に書いてあったでしょう、『お姫様を安全な場所まで導いたらゲーム終了』だと」

詭弁きべん大概たいがいにしろ貴様ら!」「こんなだまし討ちのようなやり方を学長が認めると思っているのか!」「すぐに報告してやるぞ!」



 ガイツのそばを固めるアルクスの隊員が口々くちぐちに怒鳴る。

 両耳をふさぎながら、冷たく彼らをにらみ付けるナタリー。



「あなた方が『だまし討ち』とか言います? 自分のことは棚に上げてよくも――」

「コーミレイさん、おさめなさい。いさかいは無用です」

「いいだろう。我々は我々の仕事をするまでだ、マーズホーン教諭きょうゆ。イベントは中止だ。お前達はボルテール兵士長へいしちょうと共に王女の拘束こうそくを――――」

「おっとっと。んなこた許しませんよ、兵士長殿♪」



 背後からの声に、ガイツは振り返りもしなかった。



「――音も無く背後をとるか。よもや、本当に我々アルクスと事を構えるつもりでは無かろうな、イグニトリオ」

「残念でした。僕は今イグニトリオでなく・・・・・・・・・生徒会長・・・・ですよ」

「相変わらず仕事が早いですね、イグニトリオ君」

「なんの、呼び出しあるまでヒマしてたんで。もう一人・・・・も間もなく来るかと。指示出しも終わる頃ですから」

「もう一人だと?」

「ええ。必要なんですよ。あんた方アルクスを止める為に」

「――おごりが過ぎるぞ。ひかえろ・・・・学生風情ふぜいが」

「ホラ見えた。それが結局」

「学生風情がッッ!!」

「限界なんじゃないかって思うんですよね僕。あんたの、いいや? 傭兵ようへいサマ風情のね」

「だったとしても貴様等学生風情よりマシだ。はるかにな」

「どこがです? 組織の利益に目がくらみ、学生ぼくら闇討やみうけむき!……あんたが帰ってしたことの、どこが遥かにマシなので? ぜひお聞かせ願いたいですね」

「そこまで言うなら聞かせてやろう、もう一度な。信用できんのだ貴様らは。万年休学のおかざ生徒せいと会長かいちょうが、この事件を興味本位で引っき回し、ケツもけない差別と偏見へんけんまり共をさも英雄えいゆうになれるかのようにき付けて一体何が出来るというのだ!!」

「だからそれはおたくも同じでしょうよ」

「違うな。少なくとも我々は責任をとれる・・・・・・

「………………。確かにそうですね」

「見えるようだぞ。事態が悪化し手が付けられなくなった時、尻尾しっぽを巻いてこの座興・・から手を引く貴様等大貴族共の姿がな! 子の世代とて忘れたとは言わせんぞ、貴様等があの内乱・・・・おり見せた考える限り醜悪しゅうあく幕引まくひ――」

「だからもう一人なんです。バルトビア兵士長」



 りんと通る声。



 それは、ギリートのものでは無かった。

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