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「……恐らくは」

「恐らくって。何パーセントくらい?」

「…………確率は、そう高くない」

の悪いけってことね。んじゃもう一つ。正直さ、今君の呪いってどういう状態なの? 動けたり動けなかったりしてるじゃん?」

「状態――――は、わからない。俺にも」

「……分の悪すぎる賭けってことね。というか、それってもう『勝てる』って言わないんじゃないの? やすいじゃん、コーミレイさん泣くよ」

「…………」

「……何か理由がありそうな顔だね。もしかして再計算の結果、自分一人じゃ勝てない算段でもついちゃったとか?」

「……!」

「……なるほど、なるほどね。ホント解りやすすぎるくらい顔に出るね。こりゃアルテアスさんの提案した配慮は正解だな」

「は。配慮だと?」

「うん。じゃそろそろ行くね」

「待てっ。どういう意味だ、配慮とは――」

「そのままの意味、君への配慮だよ。出来ることなら君を、一切戦わせずに事を終えるためのね」

「ッ!! ふざ――」

「あーはいはい、そうやって君が怒るからってアルテアスさん、最後まで反対してたんだよ。ことごとく予想通りの動きだね君は、完全に読まれてるじゃないか行動パターン。ちなみにその配慮を最終決定させたのは僕とコーミレイさんね、アルテアスさん恨むのは筋違い。オーケー?」

「っ……!」

「ま、呪いのこともあるし、せっかく仲間になった君にすぐ死なれちゃ困るからね。君は僕らの保険として、ここでじっと耳でもましててくれよ。じゃあね」

「だが――まてギリートっ、皆に伝えて欲しいことが――」

「気にならないか?」



 ――ギリートが振り返り、その甘いマスクに金色の目を光らせ、あやしく笑う。



「――その黒騎士とイグニトリオの次期当主。勝つのはどっちか・・・・・・・・、ってかれたらさ」

「!!――――待て。まさかマリスタの作戦ってのは、」

「安心して、戦うのは騎士とだけ・・・・・だ。もう一人は助け出すよ。英戦えいせん魔女まじょ殿どのがね」

「『英戦の』――――マリスタが!?」

「ふふ、楽しそうでしょー。残念ながら君はそこで留守番だ、いい子にしてるんだよ」

「くそっ――――おい、ホントにに危害は及ばないんだろうな!? 万が一にもケガをさせれば事態は大事おおごとに」

「もー、大丈夫だってば。この作戦は――――」



 その時だった。



 俺達の間の空間に、小さな魔法陣まほうじんが現れたのは。



「!?」

「あらら。ここにまで・・・・・か」



 ギリートが魔法陣に歩み寄る。

 その間にも、陣に魔素の光が渦巻き収束し、



 ポンと、それは生まれた・・・・



「――……何だ? それは」

「うひゃひゃ。かゆいかゆい」



 空中に、空気を小さく弾けさせながら生まれたのは、四肢ししを持たない頭だけの、デフォルメされたぐるみのような怪物かいぶつだった。

 ちょこんと着地した怪物はまん丸で大きな目をぱちりとしばたかせたかと思うと、その全長ぜんちょうの数倍以上に跳躍ちょうやくし――――かぷりと、歯のない大きな口でギリートの右手に噛み付いた。

 くすぐったがっているのを見るに、害は無いのだろう。それにギリートは……



「……それも作戦の一部か?」

「まったく、僕のいない間に優秀な召喚しょうかん術師じゅつしやとわれたもんだよね――――そうだよ。これが主な敵・・・さ」

「?、! な、何を――」

「じゃ、ホントに出番近いから。後はアナウンスにでも耳を傾けときなよ。それじゃあねー」

「お、おいっ……!」

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