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 ドアの向こうから、アルクスの気配が消える。

 「企画きかくの内容が違う」? さっきのは、明らかに学祭終わりのアナウンスだったようだが、一体何だ。まさかクーデターまがいのことでもやってるんじゃあ――――



「あららら、まあまあ。見事に引っかかって牢屋ろうやの前無人にしちゃって。迂闊うかつにも程があるってやつだよね」

「!!」



 ドア越しに聞こえるムカつく声。

 聞き間違えようはずもない、これは――



「――ギリート・イグニトリオ!」

「フルネームで呼ばないでしょハズいなぁ。――動き出したよ、みんな・・・。アルテアスさん発案の『無血むけつ完勝かんしょう友情ゆうじょう大作戦だいさくせん』に乗ってね」

「む――何だって?」

「まま、発案者のオツムはアレだし名前は置いとくとしても。作戦内容は本気だよ。皆全力で動いてるとこ」

「――ギリート、頼みがある」

「何? 悪いけど出してはあげられないよ、君の拘束こうそくはあのデモ以来学長命令に等しいことになっ」

「違う。もし手が空いてるなら、――俺がお前の眼鏡にかなっていたなら、頼む。マリスタ達に協力して欲」

「あのね、それもう返答した・・・・・・・・でしょ僕」



〝マリスタ達を頼む・・。俺が眼鏡に適っていたなら〟

〝――参るよねぇ。ホレれた弱み・・・・・・って奴はさ〟



「――――、」

「何回も言わせないでくれる? 他のみんなと違って、愛情表現に関してはつつましやかでいたいんだ僕は」



 格子こうしまどからのぞくギリートの目が笑う。

 反射的に格子窓から距離きょりをとってしまったが――――こいつの笑みへの嫌悪感など、こみ上げる安心感に吹き飛ばされて消えてしまった。



 ギリートの信頼を得た。

 こいつは、今もって俺の味方になったのだ。



「……その誤解ごかいまねく言い回しを止めればいいだけだろうが」

「憎まれ口叩けるくらいには落ち着いたみたいだね、上等上等。じゃあもう始まるし、作戦後にね」

「待て待て待て。待て」

「何?」

「こっちの台詞セリフだ。何しに来たんだお前」

「別に? もう一回来てもいいって言ったけど来れてなかったからさあ」

「…………」

「はは、そう怖い顔しなさんなって。心配は無用だよ、クーデター起こしたってんじゃないから」

「アルクス共は学生のイベントだと言っていたが」

「面倒なので質問はナシ。説明もナシ」

「貴様」

「いいから君はボーっと見てなよ。……あ、そういうワケでもないか。コーミレイさんのあの言葉の意味でも考えときなよ」

「ナタリーの……」



貴方あなた黒騎士くろきしに勝てますか?〟



「黒騎士ってのが何なのかは僕も聞いたよ。おっかないねえ、人を一突きで殺そうとしてくるサイコ野郎なんてさ。それを君、『倒せる』って言ったよねあの場で。どうるつもりなの?」

「!? ま――――待て。お前、黒騎士やつのことを知ってるってことは――――もう一人・・・・のことも?」

「ん? ああ、君はそれも知らないんだっけ。うん、コレ別にカマかけとかじゃないよ。当然知ってる。ホラさっさと質問に答えて、時間無い。君は黒騎士に勝てるの?」

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